「何してんだ?」




ガルポスでの夜、私は浜辺に一人で涼みに来ていた。
すると、背後から思い切り抱きしめられて耳元で低く囁かれた。声の主は少しだけ怒っているようだ。



「夕涼み。何かあったの?怒ってるようだけど…」
「いや、もう夜だから夕涼みじゃねーだろ。…あんま一人で出歩くな」


ああ、心配してくれたんだなーと悟って、クスリと笑う。心配した、って素直に言えばいいのに。
すると笑われたのが気に食わなかったのか、スパーダは抱きしめる力を強くしてきた。少し痛い。



「ごめんごめん。でも、もったいないじゃない」
「何がだよ」
「ほら、こんな夜景滅多に見れないよ?」


指差すのは、こことは海を挟んで真反対の位置にある、ガルポス・リゾート地区の高級ホテルの明かり。王都レグヌムでも、これほど美しい光を見ることは出来ない。
残念ながら今泊まっている所は、やっすーい宿屋なんだけどね。まあその代わり浜辺が静かで綺麗だからいいんだけど。



「へえ、中々綺麗じゃねーか」


キラキラとネオンが光る海の向こう。同じガルポスなのに、ここまで違うなんてすごいよね。今度は向こうのホテルに泊まりたいなー、なんて零すとスパーダに笑われる。



「お前みたいな一般人じゃ無理無理。あそこ、一泊何ガルドか知ってんのか?」
「あー言わないで。夢が崩れちゃう」
「…ま、俺は向こうよりコッチのが好きだけど」


スパーダはそう言うと、私の首に顔を埋めてきた。少しだけくすぐったくて、身を捩じらせる。



「静かで、夜景も見れていいじゃねえか。向こうだったら、煩くて眩しくて良いことなんか、美人のねーちゃんがいるくらいしかないぜ?」
「美人のねーちゃんって…」
「妬いた?」
「妬くわけないでしょ、ばーか」


まあ良い気分じゃないのは確かで。すると、私のご機嫌を取ろうとスパーダの腕が私に絡みついてくる。



「まあ、美人のねーちゃんより名前のほうが嬉しいけどな」
「バカ」
「お前さっきからバカバカ言い過ぎだろ」
「バカ。バカバカバカ、好き」
「…バーカ」


体をスパーダの方へ向けて、抱きつく。真っ赤になっている顔を見られたくないので、私は彼の逞しい胸へ顔を埋めた。
彼のにおいが広がって、とても心地が良い。




「…この旅が終わったら、またこんな風に二人で夜景を見たいな」
「じゃあまた来るか?もちろんルカたち抜きで」
「ほんとう?」
「ああ。…そうだ、旅行もいいかもしれないな。観光。適応法が無くなったら、旅で行ったトコ…もう一回自由に周ってみたい」
「そうだね」



お互いの身体を寄せ合って、きつく抱きしめ合う。
すると涼みに来たはずなのに、何だかココロも身体もぽかぽかになってしまった。






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莉空さんのみお持ち帰りokです



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