(至純設定)



一週間前、リチャードにデートに誘われた。
当然嬉しかったのだけど、私は生まれてから今まで、一度もデートというものを体験したことがない。

何をすればいいのか、何を持っていけばいいのか、何を、何を、何が、何が…。
結局、自分ではどうにもならなくて、シェリアに助言をもらうことになった。



シェリアさんのデートの秘訣1「デートは、服装が肝心よ!」

ということで、前日にシェリアにつれて行かれたのは、バロニアにあるブティック。そこで、おにゅーの服を数着購入した。そのままお化粧品屋さんに連れていかれて、化粧道具を、バッグを、髪飾りを…、今日一日で何ガルド使ったかわからないくらい、色んなものを買った。

そして宿屋の一室でファッションショーのはじまりだ。
いや、ファッションショーというより、着せ替え人形遊びといったほうが正しいか。

服をとっかえひっかえ着せかえられて、あーでもないこーでもない…。2時間後、明日着て行く服が(やっと)が決まって、その日は就寝。
デート当日、シェリアに叩き起こされた私は、髪を弄られ顔を弄られ大変身を遂げた。



慣れないヒールが難しくて、躓きこけそうになるのを何とか踏ん張り、私は待ち合わせの場所まで歩いて行く。
すると、待ち合わせ時間20分前なのに、リチャードが待っていた。よ、良かった…シェリアの言ってたこと、当たった!



シェリアさんのデートの秘訣2「待ち合わせ場所には、早く行く!」

理由は、相手が早く来ているかもしれないからだ。リチャードは必ず20分前にはいる!と昨日シェリアは断言した。真面目な人ほど、待ち合わせ場所に早く来る。らしい。
とにかく、私はリチャードのもとへ駆け寄る。



「リチャード!」
「名前!」

優しく笑いかけてくれたリチャードに、胸がきゅんとなる。だけど、その時私はすっかり忘れていたんだ。…ヒールの存在を。


「っ!」
「名前!!」


躓き、こけた。だけど、衝撃はこなかった。
リチャードが私のことを支えてくれていたからだ。ふわりとリチャードのつけている香水の香りが漂う。


「おっちょこちょいだね、名前は」
「ご、ごめん…」


シェリアさんのデートの秘訣3「チャンスは必ず物にする!」

一瞬でわかった。これが、シェリアの言っていた『チャンス』だ。
私は思い出す、シェリアが言っていた。もしラッキーハプニングで抱きつく事ができたら、そのままぎゅっと、服の裾を握る…だったっけ?


シェリアに言われた通りに、ぎゅっとリチャードの服を握った。
するといきなりで驚いたのか、リチャードが私の名前を呼んだ。…や、やっぱりいきなりはマズかったかな…?

控えめに離れると、リチャードが何か考えるように顎に曲げた人差し指を当てる。



「リ、リチャード…?」
「…名前、無理してないかい?」
「え…?」

私が驚いた表情になると、リチャードは少しだけ笑いながら私の頭を優しく撫でる。


「シェリアさんの入れ知恵だね?」
「…、だって、私…デートって、何をすれば分からなかったから…」
「名前」
「…」

リチャードは私を優しく抱きしめると、耳元で囁くように喋り始めた。


「デートっていうのはね、自然体で楽しむものなんだ。…少なくとも、僕はそう思っている」
「…」
「名前と一緒にいれるだけで楽しいんだよ」
「リチャード…」
「…でも、せっかく僕のために頑張ってくれたんだ。…嬉しい、ありがとう」


シェリアさんのデートの秘訣4「とにかく楽しむ!」

優しく微笑んだリチャードの背中に腕をまわし、私はにこりと微笑む。


「あのね、リチャード」
「何だい?」
「今日は、楽しもうね?」
「…ああ」


リチャードと手を繋いで歩き始める。
そうだ、着飾らなくたっていいんだ。…私もリチャードと一緒にいるだけで楽しい、その空気を楽しむのが、デートなんだ。




ラビットシンフォニー
(繋いだ手から温もりが広がって、ああ幸せだなって実感した)





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駿河零さんのみお持ち帰りokです



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