寝る前に見た夜空がとても綺麗で、私はこっそりと宿屋を抜け出して近くにある小高い丘の上へやってきた。
草の上に寝転がって、満天の星空を仰ぐ。吸い込まれそうな闇の中にキラキラと輝く星。

開けている場所だったので、まるで星に囲まれているかのようだった。心地よさに目を瞑ると、真上から「ここにいたんですか」という声が。
私は目を開けて声の主を見る。呆れたように腰に手を当てながら私を見ているヒューバートと目が合った。


「星が綺麗だったから、つい」
「まったく、夜中に出かけて…。何かあったらどうするつもりだったんですか。あなたはもっと女性としての自覚を…」
「じゃあヒューバートが一緒にいてよ」
「…」

彼は無言で私の隣に腰掛ける。
口煩い彼。でも私は知ってるよ、口煩いのは照れ隠しなんだって事。さっきのも、私を追いかけてきて一緒にいたかったから理由を作ろうとしていたんでしょ?あ、言っておくけど自惚れているわけじゃないから。だって彼の態度は分かり易いんだもん。あ、でも…ちょっと意地悪してやろう。


「何でヒューバートは私を追いかけてきたの?」
「さ、先ほども言いましたけど、何かあってからでは、遅いし…」
「でもヒューバートは私の彼氏でも何でもないじゃん。前から思ってたんだけど、何でそんなに私に構うわけ?」
「…っ、そ、それは…」

顔を真っ赤にさせて俯くヒューバート。ふふっ、可愛いなあ。
…私とヒューバートは幼馴染でもある。昔から私のことが大好きで、名前ちゃん名前ちゃんっていつも私の後をついてきたっけ。私も、ヒューバートのことは好きだから、満更でもないんだけどね。

大人になっても少しだけ甘えん坊で可愛いヒューバート。そんな彼が可愛くて仕方ない。
しゅんとしょげてしまったヒューバートの腕を引き、自分のほうへ引っ張った。すると、簡単に私の方へ倒れこんできたヒューバート。鼻と鼻がくっ付きそうなその距離に、ヒューバートは顔を真っ赤に染めた。


「名前っ!な、何を…!」
「ふふっ、ヒューバート可愛い。顔真っ赤だよ」
「っ、ぼくは可愛くなんか…!」
「……」


でも、正直この距離感には飽き飽き。
私もヒューバートが好き。ヒューバートも私が好き。だけど付き合ってはいない。何故って?…彼が告白してくれないから。

私は自分から告白する気はないよ。だって、好きな人から告白してもらいたいタイプだもん。
それに、ヒューバートだって分かってると思うよ。私と両思いだってことくらい。だけど告白してこない。もう、へたれにも程があるよ!


なんだかそれに少しだけ苛立って、ヒューバートの背中に手を回し、ぎゅっと力を込める。
すると、ヒューバートは焦り始めた。


「ちょ、名前!何を…」
「ぎゅってしてるの」
「ど、どうしてですか…!」
「…」

彼は時々、私に気持ちを言わせようとしてくる。今のだって、「好きだから」とか言って欲しかったんだと思う。だけど、そんな見え見えな方法に引っかかると思うなよ。


「別にー、なんとなく」
「…なんとなくって…」
「なんとなくはなんとなくだよ」
「…」


すると、次の瞬間いきなりヒューバートの顔が険しいものになった。そして、その直後に顔を悲しみに歪ませる。


「名前は…本当はぼくのことをどう思っているんですか」
「え…?」
「期待させたり突き放したり…、ぼくは…あなたのことが、…」
「……わたしの、ことが?」
「す、き…なんです。っ、だから、あなたの気持ちも知りたい」
「ふふっ、私も好きだよヒューバート」
「…え?」
「だから、私も大好き」


あまりにもアッサリと応える私に、ヒューバートは少しだけ戸惑った表情を見せる。まあ、そうだよね。いつも焦らしてたから。
…でもこれにはちゃんと理由があるんだよ、ヒューバート。


「やーっと言ってくれた」
「…?」
「私、ヒューバートが告白してくれるのを待ってたの。…いつも焦らしちゃってごめんね?」


私がチラっと舌を見せながら笑うと、ヒューバートは照れた顔を隠すように私を抱きしめた。




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az.さんのみお持ち帰りokです



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