(監禁、リチャードが吸血鬼)
「ふっ…ぅ」
「…名前、ん…」
バロニア城の、リチャードの部屋。
ここに監禁されてから、どれくらいの月日が経ったのだろう。
「僕、実は吸血鬼なんだ」
リチャードからの突然の告白。だけど私は動揺なんてしなかった。むしろ、リチャードが自分の秘密を教えてくれて嬉しかったのを覚えている。
それから、一度だけ歯を立てられた。すると、リチャードは驚いたように私を見て、そして優しく笑う。
「僕と一緒に、来てくれるかな?」
それから私は監禁された。…いや、監禁という表現は少しおかしいかもしれない。だって私は自ら進んで彼の傍にいることを望んだのだから。
彼は毎晩、私の首筋に歯を立てる。痛いけど、気持ちいい。
私の血が彼の一部になるなんて、この上ない快感だった。
彼は私の血の味を楽しむと、その歯型のついた肌に優しくキスを落とす。そして愛の言葉を囁いてくれるの。
「やはり、美味しい。…これほどまでに愛した女性の血が僕の舌に合う…、これは運命だと思わないか?」
「リチャード…好き」
「僕も好きだよ、名前」
「ん…ふっ、ぅ」
唇にリチャードのソレが触れる。少しだけ血の味がした。最初のほうは不快だったけど、もう慣れてしまった。
むしろ、この味がないと…キスじゃない。
夜中に、誰もいない電気もついていない部屋で、私たちはお互いの存在を確かめるように強く強く抱き合う。
角度を変えて何度も何度も触れ合う唇。
だんだん意識がとろんとしてきて、彼に体を預けるような体制になる。すると、彼はやっと唇を離した。
「気持ちよかった?」
「…馬鹿っ」
「ふふっ、可愛いな」
にこりと笑った彼の口から、鋭い八重歯が覗く。ゾクリと体が震えた。
「僕は、たとえ君の血が不味くても…こうして君を監禁したんだろうね」
「…」
「これほど人を愛おしいと思ったことはない。この愛、どうやれば君に伝えることが出来るだろうか」
まるで、お芝居のような台詞を吐いて私を切なげに見つめるリチャード。
私はそんな彼の頬に手を当てて、ちゅっと頬に唇を当てる。
「名前…」
「リチャード、ずっと離さないで」
「…当たり前だよ、何があっても君は僕の傍にいるんだ。…ずっと、ずっとね」
狂っている、と思われるかもしれない。
私たちはお互いを愛しすぎてしまった。だけど、それが間違いだと思わない。
今宵も私たちは愛し合う。
*
拓都さんのみお持ち帰りokです