(悲恋)



大統領からのお使いでラントに書類を届けにきた、ストラタ軍衛生兵な私、名前。
幼馴染であり、淡い恋心を抱いているレイモン(まぁおまけでヒューバートにも)に久々会うために、遥々海を越えてやってきたの、だ、が…。


当の本人は、サムライ紛いなことをやって腹を切るわ、女の子を拘束して人質にするわ…超最低なことをやっている最中であった。何がって、私が来たのが。
まぁそれはいいとして、問題はここからだ。
レイモンが拘束した女の子が、未だに倒れて呻いているレイモンを治療してあげたのだ。やーさしーい。天使のようだ。
それをヒューバートに伝えると、「ぼくの幼馴染ですからね、当然です」とどや顔で言われた。
同じ幼馴染でも、腹切って女の子を拘束するようなやつがここにいるけどね、というツッコミは華麗にスルーされた。畜生。

あ、また話が脱線した。
そう。問題はここからなのだ。


目を覚ましたレイモンが、なんと女の子に惚れてしまったのだ。
まぁ。まぁ?

シェリアさんという女の子は、可愛いし?細いし?足長いし白いし目なんかパッチリだし、着てる服もひらひらでピンクで?唇なんか何塗ってんのかっていうくらいぷるっぷるだし、頬はピンクだし?胸もそこそこあるし?まつげ長いし、仕草は女の子だし、そのくせ優しいときた。
完璧じゃないか。女として。


それに比べて私はどうだろう。

砂漠育ちの焦げた肌。胸はないし、目も大きくない。着ているのは軍服。唇はリップつけてるだけのテカテカ。まつげは短い。仕草は男っぽい。ぶっきらぼう。素直じゃない。髪なんて、あそこまで可愛くウェーブとか手入れとかしてない。
特技は力仕事ときた。


あぁ、なんて可愛くないんだ。



私がレイモンのすぐ傍に居たのに、やっぱり可愛い子がいいんだな。…なんて。



シェリアさんたちが去っていった後、ようやく私がいることに気づいたレイモンが話しかけてきた。




「あぁ、来ていたんですね。用事は何ですか?」
「大統領からの書類、届けに」
「そうですか。それより、見ました?」
「何を」
「私の天使ですよ!美しい、シェリアさん…。あんなに美しい女性を、私は見たことがありません!」
「あ、そう」



レイモンは嬉しそうに目を細める。きっとシェリアさんのことを思い出しているのだろう。





「……馬鹿みたい」
「え、何か言いましたか?名前」
「いいや、何も言ってないよ」
「そうですか。では私は仕事があるので、これで」






馬鹿みたい。





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