彼の手のひらの温もりに触れるとじわじわと自分の手を伝い、その温もりがやがて自分を包み込んでくれる。
アスベルの隣に寄り添って、目を閉じる。彼の手の力が少しだけ強くなった。


「名前」


じわっと体中に温かいものが広がった。彼から愛を囁かれたわけでも、彼から素敵な言葉を聞いたわけでもないのに心が騒ぐ。
彼の甘くて優しい声を聞くだけで、私は満たされていく。

アスベル、と私は彼の名前を呼ぶ。すると彼は優しく目を細めて私を抱きしめた。私も彼の胸元に顔を埋め、瞳を閉じる。


すると今度は一気に心の中に温かいものが広がった。それと同時にドキリと胸が踊った。
彼には何度も抱きしめられたし、キスもした。だけど、その度に私の心は温かいものに満たされた。


ドキドキドキ…、彼の心臓のテンポもゆっくりと加速してゆく。


愛おしい、愛おしい…。


言葉じゃ足りないくらいの想いが、私の心を支配していく。



「アスベルは、侵略者だね」
「何故だ?」
「私の心をいつも支配していくから」
「じゃあ名前も俺の心の侵略者だな」






すき


なんていらない


あいしてる


もいらない




あなたが傍にいてくれるだけで、私は満たされるから





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テーマ「人外ファンタジー」
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