出会いは突然だった。





私はストラタの商人で、たまたまウィンドルに来ていた。
神とかそんな類のものが好きな私は、聖堂を見つけてとにかくはしゃいでいた。そして、近くに横穴があったから聖堂に入った。入ったのだ。


免罪の水などの珍しいものがたくさんあり、私は興奮した。…興奮したのがいけなかった。
聖堂の左側…、丁度免罪の水と対になっている所に扉があったのだ。



興味本位でそこを開けると、洞窟に通じていた。

子供のころの探究心というか、冒険心というか。その辺のものがこう、胸の奥から溢れ出してきた。
駄目だって分かっていても、そこが危険だって心のどこかで思っても、でも足が止められなかったのだ。


しばらく進むと、ここに入ったことを本気で後悔した。
この地下道は魔物の巣窟だったのだ。

護身用の小刀で魔物たちを撒いたまでは良かったのだが、ここから去ろうと後ろを向くと人影が。

まずい、と思った。


私はストラタの人間、おそらくこの道が続いている方角からして、もしかするとここはバロニア城へと通じているのかもしれない。
もし今の人影がウィンドルの兵士だとしたら、まずい。捕まったらやばい。

私は急いで隠れる場所を探した。だがそこは暗いだけの一本道だったため、隠れるような場所はなかった。
仕方ないので、私は走って地下道を進んだ…先で会ったのがこいつだ。





「名前は本当にかわいいね、いつまでも僕の傍にいるんだよ?」


先ほどから私の腰に纏わりついて離れない、リチャード。
地下道で倒れていたリチャードを助けたのが始まりだった。

こいつを助けて以来、何故か私はずっとリチャードの傍にいる。え、商人の仕事?辞めさせられましたよ、リチャードのせいで。



あの後、リチャードの知り合いだというアスベルとソフィに出会い(あの時の人影はこの二人。心配して損したよ)、追っ手の兵士からリチャードを守り(あ、やっぱりここは危なかったんだね)グレルサイドに向かう途中でパスカルと出会い、なんか王都を攻めることになって、ウォールブリッジに潜入したり、リチャードがおかしくなったり、シェリアと出会ったり、セルディクさんを倒したり、リチャードが王様になったり…などなど色んなことがあった。何でお前が一緒に行動してるんだって?…なりゆきだよ。

で、ラント(あ、ヒューバートの故郷だ。…ヒューと私は友達なのだ)とやらへ向かうらしいアスベルたちに着いていこうとしたのだが、リチャードに阻止された。


「君は僕の傍にいればいいんだよ」





そこから色んなことがあった。

リチャードはだんだんおかしくなって、アスベルたちと敵対するようになった。だけど私は、リチャードがいけないのだと分かっていても彼から離れることはできなかった。
アスベルたちと戦闘をしたこともあった。友達のヒューバートは私のことを攻め立てた(彼もアスベルたちの仲間になっていた)…でも、私はリチャードの傍にいることを選んだ。


最後の戦いで私はリチャードを庇って倒れた。私はホッとした。どこかで感じ取ったのかもしれない、…これで世界は平和になると。




次に目を覚ますととても柔らかいベッドに寝転んでいた。
するとすぐにリチャードが抱きついてきて、見回すとアスベルたちもいた。



「君はずっと僕の傍にいるんだよ」


何度目か分からないその言葉を言われる。最初のころは少しだけ嫌だったその言葉は、今では無くてはならないものになっていることに自分でも驚いた。






それから私はリチャードの傍にいるようになった。周りの貴族から反対されても、リチャードは私を守ってくれた。




「好きだよ」



リチャードの「傍にいて」が「好き」に変わった。そこで私は気づいて笑った。
何故、私はこんなにもリチャードの傍にいたいのかが分かったのだ。







なんでいっしょにいたのかって?好きだからだよ。
それはどこか曖昧で、壊れやすくて






あの時のリチャードの傍に一人でもずっと一緒にいる人がいたら、きっとリチャードはその人に依存するんだろうな、と思って出来た話。





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