名前はさ、好きなヒトとか…いないの?
それだけでいいのだ。
それを聞くだけでいいのに、ボクの中の何かが邪魔をして、その何気ない質問を彼女にすることができないでいた。
その、ボクの中の何かの正体にも気づいている。そしてそれがたくさんあることにも気づいていた。
まず一つ目は照れだ。
ボクは男、名前は女。同性の友人同士なら、この質問をすることは容易いだろう。
普通に話すだけでいいのだから。
そりゃあ、それには例外はあるヨ?友達と好きなヒトが被ってるのを知ってたりとかしたら、聞きにくいしネ。
だけど、今は友達といえど、男女間な問題なのだ。簡単には聞けやしない。
ましてや、自分の意中の相手に軽々と聞けるわけがなかった。
あとは、もし聞けたとして名前な好きなヒトがボクじゃなかったら、悲しいだけではすまない。
そんな事があったら、きっとボクはショックで死んでしまう。
だけどボクは聞きたかった。
名前の好きなヒトを、聞きたかった。
自分でも分かっている、矛盾していると。
でも、どうしようもないのだ。
ユージーン、今なら分かるよ、ユージーンの言ってたこと。
恋って、難しいんだね。というか、ユージーンは何でそんな事知ってるんだろ?
ユージーンもそんな恋をしたのかな?なんだかすっごく興味が湧いてきたんですけど。
聞きにいこっかな。