おいしい紅茶を飲みたくなった。それをヒューバートに伝えたら彼はストラタ産の高級茶葉を差し出した。
顔を赤らめてお礼なんていいですよ、どうせもらい物ですしなんて言う可愛い彼の頬に軽くリップ音をたててキスすると、ヒューバートの頬はさらに赤くなった。
私は知っている。彼がこの前ストラタへ寄ったときに紅茶の葉の店へ立ち寄っていたことを。今日は彼を誘うことはできないけど、機会があればヒューバートに紅茶を煎れてあげたいな、なんて。
とりあえずもう一度お礼を言って、私は宿屋の自室へ向かった。
「パスカルっ!お茶タイムしよう?」
「お茶タイム?うん、するする!」
今日の相部屋はパスカル。私が呼びかけると、ベッドで横になっていた彼女はすぐに起き上がり、宿屋にある簡素なつくりのテーブルとイスを部屋の中央まで持ってきた。
そこに私はヒューバートから貰った茶葉で煎れた紅茶が入っているポットとティーカップを二つ並べた。ポットに被せたティーコゼーを外し、カップに紅茶を注ぐ。
こぽこぽと音を立てて注がれるそれは美しい琥珀色。ダージリンであることが分かった。渋みの効いたそれは、私好み。流石ヒューバートだな、と少し感心しながらカップをテーブルの端と端に並べた。
「あ、そうだ!この前シェリアに作ってもらったシフォンケーキがあるの!えーっと…確か、この辺りに…」
パスカルが自分の荷物を探ると、ラップに包まれたシフォンケーキが出てきた。この前シェリアとお茶した時にお菓子として食べた覚えがある。ホイップクリームを付けて食べるそれは、かなり格別だった。
小さなお皿を出して、それを二つに分けると紅茶の隣にシフォンケーキが並んだ。なんとまぁ、豪華だ。
「それじゃあお茶タイム開始だね!」
「うん。いただきます」
「いただきまーすっ!…うーーんっ、おいひいっ!」
パスカルが嬉しそうにシフォンケーキと紅茶に手を付ける。その姿が微笑ましくて私はパスカルを笑顔で眺める。
するとパスカルは眺めているだけでお菓子や紅茶に手を付けようとしない私を首をかしげながら見た。
「食べないの?」
「んーん、食べるよ」
「うん!早くしないと紅茶冷めちゃうよ!せっかく美味しいのに!」
「ふふ、ありがとう。いただきます」
私が手を付け始めると、パスカルは笑って、それから再び紅茶を一口。
みんなが喜ぶ顔が見れる。それだから私は止められない。素敵な午後のお茶タイムを。
さあ、つぎはだれをさそおうかな?