9月。秋なはずなのにまだまだ暑い。
口の中で水の固まったもの……氷を噛み砕く。


がりごりがりごり


一定のリズムを刻みながら、氷は彼女の口の中でゆっくりと噛み砕かれ、そして溶けていく。


「さきほどから氷ばかり食べて…、いい加減にしないとお腹を下しますよ」
「どんまい」
「どんまいって…」
「今涼しければ後でどうなったっていいのよ」
「…」


きっとこの後彼女はお腹を壊すだろう。そして自分に泣きついてくる所までが容易に想像できて、頭痛がした。
ぼくは溜息をつくと、彼女から氷の入った(しかも、かなり多い量の)グラスを取り上げる。彼女が「あっ」と声を洩らしたが知るものか。


「何すんのよ、ヒューバート!」
「冷たい物ばかりとっていたら身体に悪いですよ。それに、涼しくなる方法など他にいくらでもあるでしょう」
「えー、そんなの知らないよ」
「ス、スパリゾートに行けばいいじゃないですか」
「また?夏に何回も行ったじゃん」
「ですが、あそこに行けば涼めますよ!美味しいアイスも沢山ありますし!」
「いやいや、冷たい物ばかり取るなってアンタにさっき言われたばかりだろうが!」
「で、ですが…あそこぐらいしか涼める所はありませんよ…?」


だんだん語尾が小さくなっていくぼく。呆れたようにこちらを見る彼女。
半ば諦めていると、彼女が小さく笑った。



「じゃ、行こうか」
「え、い…いいんですか?」
「うん。私の気が変わらないうちに行こう」

そう行って家から出る彼女の後ろで小さくガッツポーズした。



いやぁ、今週一週間スパリゾートで「砂浜戦隊サンオイルスター」の人形ショーがあるんですよね。粘ってみてよかったです。






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