優しく曲線を描くソコに触れたい、触れたい。もちろんわたしの唇で。あ、別にわたしストーカーなんかじゃないよ!(ここ重要!!)だって、わたしと彼は恋人同士なのだから!…でも、彼はわたしの気持ちなんてこれっぽっちも分かっちゃいない。だって、付き合って結構経つのに手を繋ぐ以上のことをしてこないのだもの。そんなにわたしって魅力ないのかな。ああ、考えるだけで寂しくなっちゃう。でも、どうなのかな。どうなのかな。…あぁ、あぁあ。とにかく、わたしは彼と…


「(キスしたい、なんて言えるわけないよ)」
「どうしたんだい、名前。さっきから一人で百面相しているみたいだけど」
「リチャード…、はあ」
「なんで僕の顔を見て溜息つくんだい。失礼だね」


わたしの前に座るこの男。わたしがめちゃくちゃ悩んでいる原因を作り出しているこの男、リチャード陛下。
わたしたちは長い長い「ともだち」期間を経て「こいびと」にまでなった。だからラブラブしているより、談笑している方がしっくりくるし、楽しいのかもしれないけれども。それでもだ。…だってわたしたちは今は恋人同士なのだから。



「で、どうしたんだい?」


にこにこ、いや、にやにやしながら聞いてくるこの男は、きっとわたしが言いたい事が分かっているはずなのだ。(だって、コイツはめちゃくちゃ頭がいいから)
ただ笑ってわたしの反応を見ているこの男は、とんでもなく性格が悪いのだ。


「なんでも、ないもん」


苦し紛れに返せる言葉はこれだけ。ほんとはなんでもなくないんだよ、リチャード!だから、意地悪しないで!


「へぇ…」


妖艶に微笑みながら(あ、かっこいい…)リチャードはわたしに近づき、親指でゆっくりとわたしの唇をなぞる。(う、うあ)


「で、どうしたんだい?」


再度同じ質問をぶつけてくるこいつは、本当に性格が悪い。
唇に触れたままの彼の親指から伝わってくる熱に、クラクラしそうだった。否、もうクラクラしすぎて脳みそがとけちゃいそうだ。


「なんでも…ない」
「なんでもなくないだろ?」


わたしの耳元で低く囁く彼に、わたしは本当にとけてしまった。その証拠に、わたしの頬は熱くなり、だらりと垂れ下がりそうになったから。


「で、どうしたんだい?」


3度目の彼の質問に、わたしはどろどろにとけてしまった頬を押さえながら答える。



「リチャードと、キスがしたいなって思ってた」


そう言うとリチャードは満足したようで、わたしの唇に深い深いキスをしてくれた。





(君から言わなきゃしてあげない)(だから今までキスをしなかったんだよ)




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