久しぶりにリチャードと名前はお城で2人きりでお茶をすることになった。
2人にとって、この時間はかけがえのないものであり、至福の時でもあった。


リチャードおすすめの茶菓子と、名前が持ってきたストラタ産の紅茶を丸テーブルの上に置き、2人は他愛もない話で盛り上がる。

…そう、いつもなら。


『それしにしても、アスベルはホント、かっこよくなったよね』
「…そうだね」
『昔は俺についてこーい!って感じだったのに、今は礼儀正しくて、真面目でさ』
「…アスベルは、好きかい?」
『うん、好きだけど』
「そう」


今日のリチャードはなんだかご機嫌斜めだ。名前はそう思った。
いつもならニコニコと自分の発した言葉に優しく返事を返してくれるのに、今日は返してくれる言葉も短く、なんだか…冷たい。

ま、いいか。



『剣も上手くなっててさ、びっくりしたよ!それに何ていったって優しいもん!これにオチない女の子はいないよね!』

トントントントン

『友だち想いだし、実際私も何度も助けられてるし…。ほんと感謝、だよね』

トントントントン

『リチャード?』

先ほどからリチャードが人差し指で丸テーブルを叩いている。
それが気になったのか、名前は話を中断してリチャードの名を呼ぶ。


『どうかしたの?』
「…あのさ」
『?』
「君は今誰といるのかな?」
『リチャード、だけど』


それがなに?と言おうとした口は、リチャードによって塞がれてしまった。


『っ!――!』
「……」


腕を拘束され、身動きが取れない。
角度を変え、何度も行われる行為に、名前は為す術がなくされるがままになってしまった。

離れ際に、彼の舌が彼女の唇をぺろりと舐めた。


ゆでだこのようになってしまった名前を笑うと、リチャードは勝ち誇ったような目線を向ける。


「何が言いたいか、わかったかな?」
『な、なんでいきなり…!』
「…その様子じゃ、わかっていないようだね」

はぁ、と溜息をついて今度はあきれたように名前を見るリチャード。
名前はというと、あまりにも突然のキスだったため、まだ頭が追いついていないようだった。


「いい?名前」


リチャードは名前の腰に手を回し、抱きしめる。
そして耳元で低く囁いた。


「今度僕の前で他の男の話をしたら…。ただじゃすまないよ?」
『っ…!リチャ…』
「今日は特別に許してあげるけど…ね?」
『っ、わかった、よ…』


ようやく意味が理解できたのか、赤かった顔を更に赤くさせて、名前はコクコクと何度も頷いた。
するとリチャードは満足したのかにこりと笑って名前から離れる。


「それにしても、ショックだな…」
『…?』
「あんなにアスベルを絶賛するなんて。…悔しいな」
『ご、ごめん…』
「うーん、なんだかまたイライラしてきたな」
『…は?』


固まる名前。
でもそんなのはお構いなしにジリジリと近寄ってくるリチャード。

リチャードの動きに合わせて、名前も後ろへと後ずさるが、ついには壁際に追い詰められてしまった。
ガシリ、と掴まれた腕は、振りほどこうにも振りほどけない。




『リチャ…?』
「責任…とってね」



ニヤリと笑ったリチャード陛下。
午後のバロニアに名前の悲鳴が響いた。





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