リチャードに似合いそうな装備品があったんだよ!私はリチャードの手を取り、装備品のお店へ向かう。
この街に来たときにそのお店のショーウィンドーに飾ってあったマント。
とても綺麗な漆黒のそれは、彼を連想させて。
『絶対にリチャードに似合うから!』
「そうか…それは楽しみだね」
優しく微笑んでくれるリチャードに、私の心は躍る。
繋いだ手のぬくもりが、じわりと体中に広がる気がした。
『リチャード』
「なんだい?」
『呼んでみただけだよ』
「なんだい、それ」
繋いでいない手で口元を隠し、上品に笑うリチャード。
私もつられて笑った。
『ほら、この店!』
「どれどれ…」
ガラス越しにお店の中を覗くと、つい先日まで飾ってあったマントはもうすでに無くて。
今までの幸せな気分がスゥっと消えていってしまった。
『無い…』
「もう、売れちゃったのかな」
『…リチャード、私…』
「気にしないで?名前。僕は嬉しかったから」
『嬉しかった…?』
そう聞き返すと、リチャードは笑いながら私と繋いだ手を見せる。
その意味がよくわからないので、聞き返すと、リチャードは足を進めながらまた口を開いた。
「名前が僕のために一生懸命になってくれたのが嬉しかった、ってこと」
『でも…』
「でも、じゃない。僕はとても嬉しかったんだ。それに、手だって繋げたしね」
『手…?リチャードは私と手を繋げて、嬉しかったの?』
「もちろん」
私の頭を撫で、にこにこと。
とにかく、リチャードが嬉しそうで良かった。でも、なんだか申し訳ないことしちゃったな…。
少しだけシュンとしていると、リチャードは足を止めた。
疑問に思い、彼の顔を見ると、リチャードは悲しそうに顔を歪めていた。
『リチャード…』
「そんな顔しないで?君が悲しそうにしていると、僕も悲しくなってくる…」
『ごめんね…。でも、私…。リチャードに悪い事しちゃったよね…本当に、ごめんね…?』
「…名前」
ぎゅっとリチャードに抱きしめられる。
リチャードの匂いがふわりと私の中に漂った。
「僕は本当に嬉かったんだ。申し訳ない、とか思わないで?」
『でも…』
「…じゃあ、今度は僕についてきてくれるかな?」
『え?』
「君についてきてほしい所があるんだ」
ほら、と腕を引かれ私はリチャードに引っ張られて街を歩く。
『ま、待って!リチャード!どこ行くの?』
「僕についてきてくれたら、全部無しにしよう」
『どういうこと…?』
「これは僕のお願い。お願いに答えてくれたら、僕は満足だから。だから、もう悪いなんて思わないで?」
『本当にそれでいいの?』
「もちろん」
リチャードの目的地は以外な所だった。
先ほども訪れた、装備品屋さん。
彼は私に店の前で待っていて?と言い、一人で中に入ってしまった。
『どうしてこの店に…』
私が疑問符を浮かべていると、用事はすぐに終わったのか、リチャードが嬉しそうに出てきた。
『早かったね?』
「うん、欲しかったものが買えてよかったよ」
『そっか…よかったね!何買ったの?』
「そうだね、教えてあげなくちゃね。…名前、目を瞑ってくれないかい?」
『?…わかった』
目を瞑ると、リチャードが私の後ろに回る気配がした。そして、私の首に手が触れる。
な、なんなんだろう…?
「はい、いいよ」
『…リチャード、これ…』
「僕からの、プレゼントだよ」
私の首元には美しい装飾のシルバーネックレス。
これは…
「さっき名前に連れてきてもらったときに店内に見えたんだ。…名前に似合うかな、と思って」
『でも、私…』
「ほら…」
リチャードは私の唇の前に人差し指をもってきた。
「さっき、僕のお願いを聞いてくれるって言ったばかりでしょ?これを受け取って?…それとも、気に入らなかったかな?」
『そ、そんなことない!』
「じゃあ素直に受け取る」
『…あ、ありがとう』
「いいえ」
そう言って笑うリチャードに、私は頭が上がらなかった。
(相変わらず、だな)
(なんかあたしら、忘れられてるよね)
(パーティトップがリチャードだから、俺たちは自然とアイツについていかないといけないんだよな…)
(名前とリチャード、楽しそう)
(…ま、いいか)
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