『ヒューバートの手って、大きいよね。意外と』
「…意外とって何ですか」
『いや、悪い意味じゃないけど…あー、言葉足らずだった。ごめんね?』

私のその言葉に、ムッとなるヒューバートに慌てて弁解する。
だが、ヒューバートはまだ不機嫌そうだった。


『あのね、ヒューは細いでしょ?だから、そんなに大きくてしっかりした手でかっこいいなぁ、とか…うーん、そういう感じのことが言いたかったの』

そういうと、何故かヒューバートの顔は真っ赤になり、私は首を傾げる。


「あなたという人は…、何故そんなことを無意識に…
『ヒューバート?どうしたの…?怒ってる?』
「な、なんでもありません!…お、怒ってもいませんから」
『そう…?』


ヒューバートの不思議な反応に私は更に首を傾げる。
するとヒューバートは今度は呆れたような表情になった。(な、なんなんだろう)


「というか、なんでいきなりそんなことを…」
『ヒューバートの手を見てたら思った』
「そ、そうですか…」

彼は眼鏡のズレを直す。私はその仕草が大好きだ。
細くて、でもしっかりした指が、ヒューバートによく似合っているフレームに触れる…それがたまらなく好きだった。
それと同時に、眼鏡が羨ましくもなったりする。


『いいなぁ…』
「な、なにがですか?」
『ヒューバートの眼鏡』
「…い、意味が分かりませんよ」
『だって…ヒューバートの眼鏡をあげる指ととてもよく似合ってるし…羨ましいな、って』

ヒューバートの綺麗な指に触れられて、この眼鏡は嬉しいんだろうな。
そう言って笑うと、ヒューバートは顔を赤くし、俯いた。(どうしよ、変なこと言っちゃったかな…)


『ヒューバート?』
「あなたはいつもいつも…無意識なんですか、それは」
『え…、あ…ごめんなさい』
「何で謝るんですか。意味が分かりません」
『え、え…あ』


お、怒ってるのかな…?な、なんで?…や、やっぱり私変なこと言っちゃったのかな…?
よく分からなくて俯いていると、ヒューバートの手が私の頭に触れた。


『ヒュー…』
「なんて顔しているんですか、僕は別に怒ってなんかいませんよ。少し…恥ずかしかっただけです」
『な、なんで?』
「なんでって…あれだけ…あんな、恥ずかしい事を言われると…」


そ、そうか…私、ヒューバートに恥ずかしいこと言ったのか…。た、確かにかっこいいだとか、さらりと言っちゃったような…。いや、でも本当に思ったことだし…。いや、でもさらりと言っちゃったしなぁ…。
そう考えた瞬間、私の頬もヒューバートに負けないくらい真っ赤になった。

『っ…ご、ごめん』
「だからなんで謝るんですか…こ、こっちまで恥ずかしくなるじゃないですか」
『だ、だって…恥ずかしいんだもん』
「こっちだって…恥ずかしいですよ。…ま、まったく」


二人して真っ赤になったまま固まる。な、なんとか誤魔化さないと…!
そう思い、私の頭の上に置いたままだったヒューバートの手を取る。


「っ!名前…!」
『あ、のね…ヒューバートの手、大きいね…。え、ええと…』
「はぁ…」


ヒューバートは溜息をついて(ま、また呆れられたのかな?)私の手を掴む。
よく分からなくて、あたふたする私を笑い、ヒューバートは自分の手のひらと私の手のひらを重ねるように合わせた。


『ヒューバート…?』
「貴女の手は小さいですね」
『そ、そりゃあ…一応女の子だし。…ヒューの手が大きいから私のが小さく見えるからっていうのもあるし…』
「ふふっ」
『お…おかしかった?』
「いいえ、ただ…可愛いな、と」


そう言って笑うヒューバートに、私は更に顔を赤くして俯いた。
ヒューバートはそのまま私の指に自らの指を絡ませる。


「どうですか?意外と、大きいでしょう。僕の手」
『うっ…大きいよ。大きくて…安心、できるよ』
「っ!……やはり、貴女には敵いませんよ、名前」


再び真っ赤になるヒューバートに、私は笑いながら抱きついた。











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けいかさんへのお礼

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