夏がやってきた。
さんさんと輝く太陽の下、合宿所へ向かう私たちを乗せたバスは、緑豊かな田舎道を走っていた。

去年の合宿から丸一年が過ぎた。南沢先輩たちが引退して新入部員が入ってきて、雷門イレブンは新しい一歩を踏み出した。私たちは最高学年になり、中学生活最後の一年を楽しんでいる。私は、隣で寝ている彼氏…倉間典人を見る。


「(もう、一年経ったんだね)」


去年の合宿で、念願かなって典人と恋人になることができた。
もちろん、私一人の力ではない。南沢先輩や葵ちゃんたち、鶴ちゃんや浜野…みんなのおかげだ。だからこそ、私は典人とのこの関係を大切にしていきたい。典人も、そう思っていてくれてると…いいな。


「名前先輩、起きてます?」
「ん、どうしたの狩屋くん」
「いや、先輩が起きてたら話したいなって思って」

私たちの後ろに座っていた狩屋くんが話しかけてきた。彼は合宿後に入部してきた一つ下のとっても可愛くて、仲の良い後輩。
彼の可愛らしい言葉にクスリと笑って、いいよと言うと、狩屋くんは「やった!」と笑いながら私のほうへ身を乗り出してきた。


「気をつけてよ?」
「大丈夫ですよ!…あ、倉間先輩寝てる」
「ん、ちょっと静かにしてあげてね」
「……先輩の倉間先輩を見る目、優しいですね」
「そう…かな?」
「…相当、好きなんですねー」
「ふふっ、まあね。一年生のころから、ずっと好きだったもん」
「ふうん…」


そのあと、狩屋くんと何十分か話して、彼が眠たくなってきたらしいのでそこで中断することになった。
私は携帯を取り出す。14時過ぎ。…到着まであと一時間か。長旅なので、体が痛くなってきたな…。そう思い、身を捩っていると隣で水色が少しだけ動いた。


「ん…名前…?」
「あ、ごめんね。おこしちゃった?」
「いや、別にいい。今何時だ?」
「14時過ぎ。あと一時間で着くよ」
「ん……」


寝起きなためか、まだ頭が覚醒していないみたいで。
私の肩に彼の頭が乗る。身長が高くなって、一年前より男らしくなったけど…こういう仕草は本当に可愛くて、母性本能がくすぐられるというか、なんというか。

典人が余計に愛おしくなって、私も彼のほうへ身を寄せた。










「倉間くん、名前起きてくださいよぉ…!…は、恥ずかしくないんでしょうかこんな人前で」
「いつものコトっしょ?」
「で、でも…。あーっ、とにかくさっさと起きてくださぁあああい!」
「!!?」


耳元で鶴ちゃんの叫び声がして、慌てて飛び上がる。隣の典人も不機嫌そうに起き上がった。…いつの間に寝ていたんだろう。窓の外を見ると、合宿所が見えた。…なんだか懐かしいな。


「うっせーよ速水」
「だって、二人が起きないのがいけないんですよ?し、しかも二人…距離が近すぎです!は、恥ずかしいったらありゃしないですよ!」
「悪かったな、お 子 ち ゃ ま」
「か、からかわないでくださいよぉ!」
「ちゅーか早く行こうぜ。ほら、名前も荷物持ってさ」
「うん」



今年も、またやってきた。
最後の合宿…かけがえのない思い出ができるといいな。





20120604




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