「では、ソフィはラムダという存在と戦う為にエフィネアへ来たのか…。あの繭を作ったのが、ラムダなのか?」
「だがあれは…リチャードが作ったものだ」
「見た目はとてもリチャードに似ていたけど…。ラムダが化けてるって事?」
「リチャードがラムダな筈はない!俺はリチャードを良く知っている!」
「…そんなこと、分からないじゃないですか!何故言い切れるんですか!アレがラムダだったら…、あの中にいる名前は…」
「ヒューバート!お前はもう少し冷静に…」
「っ…うっ…」



アスベルの言葉に被さるようにソフィが呻く。私はすぐに彼女を覗き込む。すると突然、ソフィが光りだした。



「ソフィの様子がおかしいわ!」


ヒューバート以外の仲間が駆け寄ってくる。ヒューバートは悔しそうに下を向くだけだった。
エメロードさんがソフィを覗き込み、顔を顰める。



「粒子化が始まってしまいましたか…」
「粒子化…?」
「プロトス1は…肉体が粒子体で構成されているのが特徴です。今光っているのが、プロトス1の肉体を構成する粒子体です。一つ一つは砂よりも小さな物ですが、それが無数に集まり結合して、人の形を取るのです」



すると、同じように私の身体が光出す。同時に、ヒューバートとアスベルの身体も同じように光りだした。


「アスベル、シェリア…ヒューバートも…」
「え、これってどういう事なの?」
「プロトス1の粒子と同期しています…。これはプロトス1が分減保全を行った結果のようです」
「分減保全?」
「…プロトス1はひどく損傷した場合、粒子化して自己の機能を休止させ、肉体の再構成を行います。これを単粒子保全といいます。そして分減保全とは、粒子化した状態で粒子を別の器に分割することです」



エメロードさんはチラリとソフィを見て、一瞬だけ顔を顰める。
不思議に思ったが、すぐに元の表情に戻り、再び説明を始めたので気にせず聞く事にした。



「プロトス1はあなたがたの近くで粒子化したことはありませんでしたか?」
「……7年前のあの時、か…」


アスベルが納得したように言う。あの時…とはきっと王都地下での出来事のことだろう。



「しかし…、分減保全は実行する事はないはずです。…分減保全は単粒子保全に比べ、完全な再構成が非常に難しくなるからです。失敗すれば、復元が不可能になってしまう事もあるはずです。なのに…どうして…」
「その分減保全はもしかして、器自身にも影響があるんじゃない?」
「確かに器の中で再構成の準備をする際に器自体にも再構成を働きかけます」
「つまりソフィは自分の命を分けて与える事で、アスベルたちの命を助けたんだよ」
「そうだったのか…。七年前、ソフィは消えたのではなく、俺たちの中に入ったのか」
「私たち…ずっとソフィと一緒にいたのね…」



心が温かくなった。
アスベルも、ソフィもヒューバートも、名前もいなくなってしまって、絶望したあの日。…それからの7年は、地獄だった。
身体は良くなったのに、大好きだった友達…誰とも遊べなかった。ずっと一人だった。

だけど、そうじゃなかったのね。




「じゃあ今の粒子の状態で、もう一度分減保全すると、どうなるの?」
「分減保全後は自己保全機能の再構成ができないため自己保全自体ができなくなります」
「俺たちのために、そんな危険なことを…」
「…………、この状態での粒子化は大変危険です。急ぎましょう」



エメロードさんの言葉に、私たちは強く頷く。



…私がうじうじしてどうする。ソフィはこんなにも頑張ってくれていたのだ。
だから…絶対救ってみせる。そして、元気になったソフィと一緒に迎えに行くんだ。

…だから、少しだけ待っててね?…名前。








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