前方を歩く赤と青。私はそれに着いていきながら、自然を楽しむ。
綺麗だった。そよ風に揺れる葉、小さな虫、木漏れ日の光、小さく可憐な花々…。どれも海しか見慣れていない私にとって、魅力的なものだった。

「兄さん、本当に行くの?」
「ああ、一年中花が咲いているところだぞ。見てみたくないか?なぁ、名前!」

私は眺めていたてんとう虫から目を離し、アスベルの方を向く。

「うん、すごいよね!」
「だろ?今からそれを確かめに行くんだ。これは探険なんだぞ」

私の返事に満足したのか、嬉しそうに笑ってヒューバートの方を向くアスベル。
ヒューバートは焦りながらアスベルに文句を言った。

「父さんにばれたらきっとすごく怒られるよ。裏山へは危ないから行くなっていつも言われてるのに」
「親父の言う事なんて信じられるもんか」

ヒューバートが父親の話題を出すと、アスベルの表情が変わった。アスベルと彼のお父さん、領主のアストン様はあまり仲が良くないようだ。
どうやらアスベルは機嫌を悪くしたようで、ヒューバートを睨みつけながら低く呟く。

「俺はもう11才なんだ。行きたいところへ行くさ」

アスベルは一人、山の奥へと足を進めた。
おろおろしているヒューバートの手を取ると、にこりと笑いかける。

「行こう、ヒュー」
「う、うん」

ヒューバートは納得してなさそうだったけど、これ以上アスベルの機嫌が悪くなると後々面倒くさいので、私はヒューバートを連れてアスベルを追いかけた。



ラントに着いて5日…。私…名前に人生はじめての友だちが出来たのだ。

アスベルとヒューバートの兄弟。
この二人はラント領の領主の息子さんたちで、私がラントに着いた日に船に忍び込んできたのだ。その日から仲良くなり、いつも日が沈むまで遊んでいた(あと、二人の幼馴染のシェリアとも友だちになった)

今日は、アスベルおすすめの裏山…花が一年中咲いている場所へと案内してくれるそうだ。私は、花瓶に飾られている刈り取られた花しか見た事がない。花が咲いているというだけでも、興味がそそられるのに、それがとてもたくさんあるなんて…!
ヒューバートと繋いでいる手をぎゅっと握った。


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テーマ「人外ファンタジー」
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