いつの間に気を失ったのだろうか。背中には心地の悪い感触、キツい植物の刺激臭。
目を開けると、先ほどまでの青空はなく、ジャングルのような光景が目の前に広がっていた。
「ここは…繭の中なの?」
多分、いや…きっと恐らくそうなのだろう。ということは、ここを進んでいけばリチャードがいる。
真下を見ると、真っ暗な暗闇が広がっていた。…嫌な予感がする。早く、早く行かなければ。
そばに落ちていた槍を拾うと、私は生い茂る植物を伝いながら下へと降りていった。
「はぁ、はぁ…」
どうも上手く進めない。
まるで繭は生きているようだった。植物に邪魔されて進めなかったり、気持ちの悪い物体が生えてきて進路を妨害されたり、まるで意思を持っているかのように私の行く手を阻む。
なにより、この繭の中には赤い光を纏った魔物が沢山いた。否、奴らしかいなかった。…もしかしてあの魔物たちは、リチャードと何か関係があるのだろうか。
植物の陰に隠れて、魔物から身を隠しながら先へ進む。
手持ちの回復アイテムも底をついた今、戦闘は避けて通りたい。回復術があるといっても、そう連発もできない。
「リチャード、どこにいるの…?」
フェンデルで受けた傷のせいもあって、私の体力はどんどん無くなっていく。早く、早くしないと…。
植物が生い茂る場所をなんとか抜けた私は、緩やかな坂道を歩いて降りた。
きっとここは最下層に近いのだろう。少しだけ肌寒く、ブルリと身体が震えた。…もしかすると、この先にリチャードがいるのかもしれない。
「リチャード…」
フェンデルで彼が私を刺したあの時、彼は苦しそうに、悲しそうに顔を歪めていた。助けて、助けて、とずっと私に訴えかけていた。
私は、彼を助けたい。昔みたいに笑って、そして手を取り合って…生きたい。
私は、だから私は…彼を見つけ出してやる。…二人で、みんなの前に笑顔で帰れるように。