「リチャード…友情の誓い、しよう。そしたら…きっと…」


途端に私はリチャードの後方へと引っ張られた。
驚いて見ると、以前ストラタで見た黒い細長いものが私の身体に巻きついていた。


それと同時に響き渡る、爆音


「え…?」


だんだんと晴れる土煙、そして倒れた仲間たち。
そして、リチャードの手元には、奪ったはずの剣が。…まさか、この黒いものが動いて遠くにあったはずの剣を…?
だとしたら、私が…私のせいだ…


「う、そ…。いや、いやっ!放して、放してよリチャード!」
「……」


だが私の声が聞こえていないのか、彼は不敵な笑みを浮かべアスベルたちのことを見ていた。


「スカーレッドっ!」
「っ!」


引っ張られる感覚が無くなる。それと同時に私は倒れた彼らに駆け寄る事ができた。
私を黒いものから開放してくれたのは、ヒューバートだった。彼は上半身だけを起こして、銃を構えていた。

私は彼にお礼を言うと、考える。できるだけ、皆を一気に回復できる術を…そうだ!


「リザレクションっ!」


癒しの光が仲間を包み込み、アスベルたちは目を開けた。
アスベルは起き上がり、きょろきょろと辺りを見回す。そこで、私はようやく気づいた。

リチャードの最も近くにいた少女の存在を。
少し離れていたアスベルたちでさえ、あれだけの怪我を負ったのだ。近くにいたソフィは…

私も慌ててソフィを探す。すると、遠くの建造物に見慣れた紫色のツインテールが…


「ソフィーーっ!!」


「くくく…あはははははっ!」

ピクリとも動かない彼女をリチャードは嘲笑う。
それと同時に彼を纏う黒い空気が増幅した。…これは、これは…マズい。


「とうとうここまで来た…。もはや誰も我を止められぬ!」


彼を纏っていた赤黒いものが、まるで人の手のように伸びる。
リチャードが叫ぶのと同時に、その黒い手は全てのものを喰らい尽くそうとこちらへ向かってきた。


「みんな、逃げるぞ!」

マリクさんが声をかけるが、私はそれに応じない。
まだ、そこにリチャードがいるのだ。彼を一人になんてできない!


「名前!何をやっているんですか!早く逃げますよ!」
「だ、駄目!まだリチャードが!」
「危険です!何が起こるのかも分からないんですよ!?」
「いやだ!」
「チッ!」


ヒューバートは私の手を無理矢理引っ張ると、走り出した。
皆で船までの道を走りながら戻る。

ヒューバートに引きずられながら私は後ろを振り返る。私たちを追ってきていた黒いものは、いつの間にやら繭のようなものに変化していた。
もうリチャードの姿は見えず、さきほどまで彼がいたであろう場所に、黒い影が出来ていた。


「リチャード…!」


私はヒューバートの手を振り払い、もと来た道を戻る。
途端に影が差した。上空を、繭が包み込んだのだ。


「名前!」
「ごめん、みんな!私はリチャードと一緒にいるよ!」
「危険です!早く手を!」


ヒューバートは私に手を差し伸べた。だが私はそれに答えない。


「ヒューバート!名前!何をしているんだ!」
「名前、早く!」
「ヒューバート…ごめん」


私は彼の手を振り払い、そしてリチャードがいるであろう後方へと走り出す。


「名前ーーーーーっ!」



ヒューバートの声は、繭の中へと吸い込まれていった。






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