3つの大輝石の原素を吸収したリチャードが次に向かうと思われる場所、「星の核」
その「星の核」というものを調べるために、私たちはアンマルチアの里にある英知の蔵に向かう事になった。


「英知の蔵って図書館みたいな所かと思っていたけど…。違ったみたいね」
「考え方は図書館で合ってるよ。記録を残すやり方が紙じゃないだけでさ」


英知の蔵は、ウォールブリッジの地下にあった遺跡と雰囲気が似ている。
パスカルが傍にあった装置を弄ると、立体的な映像が浮かび上がった。すると、前ウォールブリッジのところではまだ一緒に行動していなかった仲間たちが、驚きの声をあげた。

(まぁ、初めてこんな立体的で透けている映像を見たら、驚くだろう。私だって初めて見たときびっくりしたし…)


「ん〜と、星の核は…っと」

パスカルが手元にあるパネルを更に弄ると、立体的な映像は形をだんだんと変えてゆく。
そして、赤・青・緑…3本の柱?のようなものが、丸い何かを、その3つの柱が囲っていた。


「あった。なになに…。ふんふん、あ〜なるほど〜。星の核ってのは確かにあるね。でも大輝石とは別物だけど」
「どう違うんだ?」
「大輝石の大本って考えるのが一番近いと思うよ」


最初に星の核で原素が生まれ、それが大輝石や普通の輝石にたまる。
それに、大輝石には星の核から出てきた原素を安定させる働きがあるらしい。

じゃあ、この映像は…、丸い何かが星の核で、それを囲っているのが大翠緑石、大蒼海石、大紅蓮石…なのだろうか?


「リチャードは大輝石の原素を吸い取っていった。原素が目的だとしたら、…そこへ向かうのも分かるね」
「…リチャード国王が星の核の原素を吸収したら、この世界はどうなってしまうんですか?」
「そうだねぇ…。あらゆる原素が枯渇した、死の世界になっちゃうかもね」
「死の…世界…」


まさかリチャードが、そんな恐ろしいことをやろうとしているなんて。
リチャードは…、優しくて、みんなのことを考えていて、ウィンドルのため…国民の幸せのために一生懸命悩んでいて…それで…それで…


それで?


なんで、そんなことをするの?リチャードは、なんでそんなことをするの?


原素を集めていた、本当の理由が分かった今、私はひどく混乱していた。
っ…違う、違う…リチャードは、そんなことする人じゃないでしょ?私は、彼に…彼に…


「っ――!」


リチャード何をしようとしているのか、全くわからない。どういう思いで、そんなことをするのか…わからない…。


死の世界…誰もいない、世界。
そんな世界を彼は作ろうとしているの?そんな、そんな恐ろしい事…とても人間のすることとは思えない。
今回のことだってそうだ。意味が分からなかった。人を傷つけて、今の彼には昔の優しかったリチャードの面影は殆ど無い。…ほとんど…


そうだよ…違うよ、リチャードは…私を助けてくれて、それで…私の友達で…。昔は、すごく優しくて…。昔だけじゃない、再会したときも弱っていた私を介抱してくれて…。
でも、原素を吸収して、そしてこの世界を破壊しようとしていて……っ!


わけわかんない、わけわかんない…!なんでこんなに悩んじゃうの…?前も、その前も…こうやって悩んでしまった時に、決意したじゃん。

彼を止めるんでしょう?守るんでしょう…?伝える事が、聞きたい事が…あるんでしょ?


でも、でも…考えてしまうのだ。…不安、なんだ。…嫌でも、想像してしまうんだ。
…この世界が、リチャードの手によって、何もない「死の世界」というものになってしまうのを。

怖かった。怖かったのだ。…大切な、本当に…私にとってかけがえのない人が、そんなことをするのが、恐ろしくてたまらないのだ。



「……」
「星の核へ行く方法はあるのか?世界の中心に位置するという事は、地面の下にあるのでは?」
「待って、調べてるから…」


皆が何を話しているのかも、聞き取れなかった。否、聞き取る余裕もなかった。

リチャードを助ける…助ける、世界を滅ぼそうとしている人を助ける…?
いや、助ける、リチャードは…友だち、友だち…私の大切な、大切な…。



身体が震える。息が上手く吸えなくなる。
…なんで、なんで…?なんで…


「なん、で…」
「名前?どうかしたか?」
「…なんで、なんで…」
「……」
「名前…?」
「なん、でよ…なんで、…なんで…」
「すみません、兄さん。少し時間をいただいてもいいでしょうか?」


左手に触れる、ぬくもり。
ヒューバートだ。だが私は何も反応できない。彼の顔を見ることさえできないほど、頭の中が混乱している。

ただ、彼に手を引かれ、どこかに向かっているという事だけ、わかった。





「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -