彼女の治療をうけながら溜息をつくと、またドアが開き、そこにはみんなの姿が。



「名前!気がついたのか」
「あ、アスベル。君の方こそ大丈夫?」
「あぁ…俺もソフィも、もう傷は治ったよ」
「よかった…」
「よかったじゃないですよ!…また勝手に行動して…こんな深い傷まで負って…!」
「ヒュー…ご、ごめん。そんなに怒らないでよ」
「怒りますよ!」
「ヒューバート!名前は怪我人なんだから静かにしなさい!」
「っ…。…心配、しました」
「…うん、ありがと。ごめんね」
「……」


こちらに背を向け窓の方へと去るヒューバート。…あぁ、やっぱり私…駄目だなぁ。
また怒らせちゃった。…きっと、皆も呆れてるんだろうな。


「はぁ…」

自然と溜息が出る。するとソフィが私の傍に近寄ってきた。


「名前…、怪我…痛そう」
「ううん。大丈夫!もう痛くないよ!」
「ほんと?」
「本当!ありがと、ソフィ。心配してくれて」


彼女の頭を撫でると、ソフィは私を一度見つめた後、視線を逸らす。(……?)


「ソフィ…?」
「名前は…、リチャードに攻撃されて…、怪我させられて…。嫌じゃないの?リチャードを、倒したいと…思わないの?」
「…うん。…私は、リチャードを信じてるから。それに、嫌うなんてこと…出来るわけないよ」
「…友だち、だから?」
「うん。それもあるし、…それに、リチャードに助けられたことが何度もあった。それにね、私…リチャードと約束してるんだ」
「約束?」
「そう、約束。…この帽子、ね」


私は傍に置いてあった、幼少の頃リチャードに貰った帽子をソフィに見せる。
そして微笑んだ。


「その帽子…リチャードの?」
「そう。これをくれたときね、リチャードが言ったの」


私は思い出す。幼少の頃、リチャードが案内してくれた、あの場所で。







「…大人になったら、君に伝えたい事があるんだ」


「この帽子は約束の証。大人になったとき、絶対に君に伝えるから」







そう言って、私に帽子を渡しながら微笑んだリチャード。
私は、その笑顔を守りたかった。守りたいのだ。


…だから、何としてでも…彼を助けたい、守りたい。そのために、私は彼を追いかけて、そして伝えなければならないのだ。




「リチャード陛下との約束、か」
「何年待たせるんだ!って感じですよね、リチャード。…いや、こんな状況になるまで聞かなかった私が悪いか」
「名前…」
「今は少しだけ変わっちゃったけど、それでもリチャードはリチャードなの。…それに、昔と変わらない優しいところも確かにあるし…。だから、私はリチャードを倒したいんじゃない。彼を救いたい、困っているのなら、頼って欲しい。…私がいるよ、って…伝えたい…。だって…リチャードはかけがえのない…友だち、だから」


そういうと、アスベルが私の頭にポンと手を置く。そして笑った。


「私、じゃない。私たち、だろ?」
「…っ、うん!…そう、だよね!…私たちが、いるよ。…いるんだよ、リチャード…」




それでも、私の傷と、胸のわだかまりは消えない。心のどこかで引っかかる、何か。
この恐ろしい予感は、一体何なのだ…?

そして、意味ありげに視線を逸らしたソフィ。…一体、何が起ころうとしているのだろうか。

…私には、分からなかった。





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