「…侵入者だ、取り押さえろ!」


カーツさんが叫ぶと、フェンデル兵が私たちの下へ走ってくる。
私は槍を構え、詠唱を始めた。


その私の盾になるように、ソフィが一人のフェンデル兵を足止めする。


「そこっ!」

ソフィがリペラチャージで相手の攻撃を防御し、反撃して大ダメージをあびせた瞬間、私は詠唱を終える。


「アブソリュート!」
「いくよ〜!ブレイクシュートォ!」

氷が流れるようにフェンデル兵を突き刺す。そこにパスカルの長銃技が決まった。


「ナイス、パスカル!」
「いえいえ〜」

と言うと彼女はすぐにもう一人いるフェンデル兵の下へ向かう。
周りを見回すと、アスベルとマリクさんがカーツさんを抑え、その援護をシェリアが。もう一人のフェンデル兵をヒューバートといつの間にやら行ったのか、ソフィが抑えていた。
パスカルも、その輪に加わり法陣術を唱えている。




フェンデル兵のほうはすぐに勝負がつきそうだったので、私はカーツさんの下へ走った。
少しだけ押されていたマリクさんは、肩にできた傷を押さえながらカーツさんと距離をとり口を開く。


「カーツ!もう一度言う。大輝石の実験をただちにとりやめるんだ」
「マリク…、お前はどうあっても私の邪魔をする気か。…二十年前に逃げ出したお前に、私が止められるものか!」


そういうとカーツさんはマリクさんに向かって突撃していった。
まずい、彼は相当ダメージを受けているはずだ…!


私は急いで槍を構えてカーツさんの下へ向かう。だが、私より先に反応した者がいたようだ。


「リザレクション!」


シェリアだった。彼女の強力な治癒術が瞬く間に皆の傷を癒す。
私自身も身体がいくらか軽くなったので、走るスピードも速くなる。


「はあっ!」


間一髪だった。マリクさんとカーツさんの間に入り、攻撃を受け止める。
そして、薙ぎ払う!


「ダークネス!」


そこに立ち直ったマリクさんが武器を投げつけた。
私は後方しながら、マリクさんを見る。


いつもなら、後衛であるマリクさんは?術を唱えて攻撃する。…だが今は前線で戦っている。
大事な友人を止めたい一心で戦うマリクさん。…私もそれを助けたい。


槍を握りなおすと、私はもう一度カーツさんのところへ向かおうとすると、カーツさんが叫んだ。


「その命貰い受ける!悪魔銃槍!」


そう言って、マリクさんの身体を容赦なく槍で傷つける。そして身体を槍で持ち上げた後に、その先端が爆発した。
それと同時にマリクさんの身体は宙を舞う。


「マリクさんっ!」
「他人の心配をしている場合かぁっ!」


動かなくなったマリクさんを回復しようと近寄ると、カーツさんの槍先が私の方に向く。
咄嗟に反応できなかった私は、マリクさんを後ろに庇いながら目を瞑る。


だが、痛みはやってこない。聞こえるのは何かが何かを弾いた音。



「っ、!」
「ヒュー!」


カーツさんの槍から庇ってくれたのはヒューバートだった。
剣で槍を受け止め、苦しそうに耐えるヒューバート。私は槍を取り出しカーツさんを斬った。


「ぐっ!」
「リヴグラヴィティ!」


カーツさんが怯んだところにヒューバートが技を決めた。
一瞬、終わったかのように思ったが、カーツさんはまだ立ち上がる。
その身体はもうボロボロで、見ていられなかった。


実験成功への執着心、それとも他の何かが、…この人を動かしている。ボロボロになっても、何があっても…。


「まだだ…まだ終わってはいない!」
「いや、もう終わりだ」


振り返ると、マリクさんが立っていた。傷だらけだった身体は、ソフィかシェリアに治療してもらったのだろう、すっかりよくなっていた。

彼は武器を構えると、それをカーツさんに向かって投げる。


「カラミティ・ロンド!」


猛スピードでブーメランはカーツさんへ向かっていき、当たった瞬間に爆発を起こした。


「ぐっ…」


膝をついたカーツさんに、私たちは駆け寄った。


「マリク…、強くなったな。…昔は、互角だったものを…」
「…オレ一人の力じゃない。仲間がいたからだ」


微笑むマリクさん。だが、いい雰囲気になったのはその一瞬だけだった。
物凄い音をたてて、大輝石が暴走を始めたのだ。







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