甲板に出て、ふと物思いにふける。
少し肌寒くなってきていて、フェンデルに近づいている事がわかった。


やはり、割り切れてなどいなかったのだ。
赤い光を纏っている魔物…。あれを見た瞬間、私は怒りに震えた。

お父さんを、船員のみんなを苦しめた、あの魔物と重なって見える。
危ない目に合いそうな仲間たちが、船員と、お父さんと重なって見える。


殆ど、無意識だった。

槍を持って、突っ込んで…。
ホント、ヒューバートの言う通り…。みんなに迷惑かけてばかりで、どうしようもない私。


自然と、涙が出てきた。



「何をやっても駄目だな。…こんなんで、本当にリチャード…救えるのかな」
「何弱気な事を言ってるんです」
「!……ヒュー」
「寒いでしょう、これを」

彼は私の近くに来て、ブランケットを手渡してくれた。
それを羽織り、私はお礼を言う。

すると息が白くなるのが分かった。


「やはり、トラウマになっていたんじゃないですか」
「…うん。やっぱり、ヒューの言う通りだったね」
「皆さんも、心配していました」
「…そうだね、…ごめん。…あーあ、この前ヒューに言われたばっかりだったのにね…。全然駄目だよ…私」
「…確かに、今日の行動は軽率でしたね」


ヒューバートの言葉に、私はかけていたブランケットに顔を埋める。
すると、ヒューバートの冷たい手が、私の頬に触れた。


「すみません、…痛かったですよね」
「うん。…でも、私が悪かったし」
「…名前」

ヒューバートに呼ばれたので、私は顔をあげる。


「駄目、だなんて言わないで下さい」
「……」
「貴女は、駄目なんかじゃないです。…でも、」
「?」


ふわっと…。


ヒューバートに抱きしめられる。
彼の鼓動の音が聞こえる位置で、更に力強く、抱かれた。



「無理は…しないでください。…心配、なんです」
「ヒュー…私…」


震えるヒューバートの腕を見て、申し訳なくなる。
…私は…私がしっかりしないと…。みんなに、心配かけっぱなしだ。


「ごめん、ヒューバート。私…みんなに謝らなくちゃ」
「…船室へ向かいましょう」
「ヒュー…。心配かけてごめんね」
「……えぇ」


体を離し、私とヒューバートはゆっくりと船室へ向かう。
…船室に戻ったら言うんだ。

とびきりの笑顔で、「心配かけて、ごめんね」と。





ゆっくりと、船室の扉を開く。
すると、みんなが一斉にこっちを向いた。

ヒューバートに背中を押され、私は言葉を発するために口を開き、笑顔を作った。









リチャードのこと、それに「光の力」のこと…

分からないことだらけで、頭がパンクしそうだ。


でも…みんなが居てくれるから、私はここまでこれた。
それを、忘れないようにしなければならない。

仲間…それは私にとって、とてもかけがえのないもの。


頼って、頼られて…。
そうして、絆が深まってゆく。…かけがえのない、もの。





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テーマ「人外ファンタジー」
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