無事に船に乗り、フェンデルを目指すことになった。
アスベルとヒューバート傍で、3人で何気ない話をしている時だった。

アスベルが何かを思い出したのか、ヒューバートに真剣な顔で向き直る。


「お前も…。あの光が使えるんだな」
「ええ。最近使えるように…」
「あの光?」
「そうか、名前は知らないんだったな」

アスベルが、光について教えてくれる。
それは、虹色がかかった白い光で、それによって普通の人間が扱う術技よりも強力なものが使えるようになる…らしいのだ。
それがヒューバートにも使えると分かったのが、私が気を失っていた時だったらしいので、私が知らないのも頷ける。


「そんな力が…すごいね、二人とも!」
「いや、実はシェリアも使えるんだ」
「なぜぼくと兄さん、それにシェリアの三人にだけこんな事ができるんでしょうか…」

ヒューバートはアスベルの方を向く。

「この理由も、いずれは突き止めなければいけないと思っています」
「お前は色々と考えているんだな。大したものだよ」
「考えるといえば、……彼のことも、ですが」

スッとヒューバートは甲板の先にいるマリクさんに視線をうつす。


「教官?お前教官の事も怪しんでいるのか?」
「教官の事も…?」
「二人とも、怪しいのでね」
「?」
「…。あの人は長年騎士学校で指導役を務めていて、子供の頃から俺を指導してくれた恩人だ」
「彼の戦い方はかなり独特です。あの戦い方をどこで習得したのか気になります」
「アスベル!」

少しだけ、空気が悪くなった兄弟。
そんな彼らに戸惑っていると、ソフィがこちらへとやってきた。


「どうしたの?ソフィ」
「パスカルが…具合悪いの」
「なんだって!?」

すると、ふらふらとパスカルがこちらへ向かってきた。
その顔色は悪く、今にも倒れそうじゃないか。


「パスカル、しっかり」
「船に酔った…。気持ち悪いよぅ…」

シェリアが優しくパスカルの背を摩るが、駄目だった。
そのまま…あ、あああああ…


「うええええ…」
「大丈夫だか、パスカル。船に弱いのか?」
「というより…。バナナの食べすぎで気分が悪くなったみたい…」
「うええええ…。もったいないよぅ…」
「……最低ですね」
「それより、私水取ってくるね!」


私は急いで船室に水を取りに行った。






「えーと、あったあった」

道具類が入っているバックから、真新しい水が入ったボトルを取り出す。

「にしても…バナナの食べ過ぎかぁ…。確かに物凄い量食べてたしね。…って、そんなこと言ってる場合じゃないよな」

水と、ハンカチを持って船室から出ようとすると、船が傾いたのが分かった。
…これは…。

私は水を持ちなおし、片手に槍を構えると、もう一度船室のドアを開いた。



「みんな、逃げて!」
「どうしたんだ、名前?」
「甲板から離れて!急いで!」
「何をそんなに焦っているんだ?」
「早くっ!」


私の叫びと同時に、大波が甲板を襲う。
これは、あの時と同じだ。…お父さんの船に、私の船に魔物が上がりこんできた時と!


「な、なんだ!?」
「今すぐに離れて!魔物が、来る!」
「何っ!?」
「アスベル!」

咄嗟に反応できなかったのか、アスベルが敵の攻撃を受ける。私は舌打ちをして、敵を見張る。
水しぶきが消えた所に、魔物の姿。私は槍を持ってそこに突っ込んだ。


「烈風瞬迅殺っ!」


だが。


「なっ、効いて…ない?」
「名前、危険です!一度離れてください!」


ヒューバートが声を荒げるが、私は彼の声を聞いている余裕がなかった。
…魔物は無傷だった。…おかしい。こんなはずじゃ…!なんで、なんで!?


「名前危ないっ!」


ソフィが叫んだ時、私は空中に投げ出されていた。
腹の下を刺されたかのように、痛みだす。否、刺されたのだ。

それと同時に、過去の記憶が私の頭の中に蘇った。




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