「オズウェル様はヒュー様に厳しすぎます!」
「は、はぁ…。あのそれでは失礼します(ヒュー様…)」
街の女の子に聞き込みを終えて、私は集合場所に向かう。
途中でシェリアと合流し、一緒に向かう事になった。
「なにかわかった?名前」
「いや…ヒューバートが人気なことくらいしかわからなかったよ」
「な、なにそのあまり必要のない情報」
「あと、ヒューは街の女の子たちにヒュー様って呼ばれてたりもする」
「はぁ……。行きましょ」
シェリアに手を引かれ、私たちは集合場所の大統領府前の広場を目指した。
すでにそこには私たち二人以外の全員が集まっており、少しだけ走って仲間の下へ向かった。
「で、みんな。何かわかったことはあるか?」
「最近気温が以前より高くなっている」
「輝石を使った噴水の水の量が減っている」
「ヒューは街の女の子に…」
「名前、やめなさい」
バシンとシェリアに頭を叩かれたので、黙る事にした。うう、痛い…
「やはり大輝石に何かあったようだな…」
「アスベル…あの人たちが…」
ソフィの指差す方向に、街の奥様方がいた。…どうやら、何か話しているようだ。
皆は黙り、奥様方二人にそっと近づき話を聞くことにした。
「大統領も大変ですわね」
「ええ、聞きました。なんでも気温が高いと抗議があったとか」
「いやですわぁ…。そんな事で抗議だなんて。恥ずかしい事をなさらないで頂きたいわ」
「ええ。それにさっきの男も、ですわね」
「その通りですわ。あのような格好で街にいるなんて…」
「物騒になったわねぇ」
「それに見ました?西門へ向かったんですよ?」
「まぁ、いったいあんな砂漠のどこで暮らしているのでしょう?怖いですわぁ」
そこまで聞いて、私たちは奥様たちから離れた。
「西門…?」
「とりあえず、行ってみないか?」
「さんせーい」
幸いにもすぐ近くだったので、5分もしないうちに着けた。
すると、男の人二人がいて、なにやら緊迫していた。
「さあ歩け!」
「だ、だれか助け…」
野蛮そうな男が、気の弱そうな青年を突き飛ばす。
その青年は前に倒れて、弱弱しい声をあげる。…あれ、あの人…
「大統領が大輝石に研究者を向かわせている事は知ってるんだよ」
野蛮そうな人がいらいらしたような口調で言う。
どうやらあの気弱そうな人はさっき私にぶつかってきた人じゃないか。
「大輝石だと…?」
「あの人を助けよう!準備はいいな!」
「ええ!」
私たちは走って近くまで寄り、野蛮そうな人を捕まえた。
「た、助かった…。ありがとうございました」
「いえ…。でもどうしてこんな事に?」
「あの、それは…」
「大輝石と関係あるんでしょ?」
「あのえっと…」
「気温が上がってる事も関係あるの?」
「その…ぼ、僕は仕事があるので!」
そう早口で言うと、眼鏡の人は門の外へ逃げていった。
「ありゃ、逃げちゃった」
「では、こっちに聞くしかないようだ」
「けっ」
「大輝石の何かを知っているようだな?」
「知らねぇな」
「お前の目的がどうだろうとオレたちには関係ない」
そう言うマリクさんを見て、野蛮そうな人は行儀悪く「んあ?」と答える。
「どうせくだらない悪巧みでもしていたのだろう」
「……」
「話してくれるだろう?」
「誰が話すかよ!」
そう言って目線を合わせようとしない男を、マリクさんは鼻で笑う。
な、なんか怖いんですけど…。
ゆっくりとマリクさんとソフィが男に近づく…。
その後のことは…まぁ、うん。
「大輝石の調子がおもわしくなかったから、輝石を求めていたとはな…」
宿屋の一室。
男から聞いた情報を纏める私たち。…男はどうしたかって…?まぁ、それは…あはは。とりあえず、しょうがなかったとしてもあれはひどいよマリクさん。
何かを熱心に書いているパスカルの横でバナナを食べながら話を聞いた。
「しかし、原因がわかった所で一体どうしたらいいのだ…」
暫く悩んでいると、パスカルが小さな声で出来た!と呟いた。
「これ持ってって大統領に見せてごらんよ」
パスカルの手元には、大輝石の描いた絵と説明文があった。
というか…絵、上手いなぁパスカル。
「大輝石の事で悩んでるなら詳しい仲間がいるから見てあげますよって」
「詳しい仲間って?」
シェリアの質問に、パスカルが大きく手をあげる。
「パスカル、大輝石のことがわかるのか?」
「少しだけどね。前に文献でちらっと見たことがあってさ」
「パスカルって何でも知ってるのね」
「へへ…ねんでも知りたくなっちゃう性分なんだよね〜。まぁ、だめもとで見せておいでよ」
「わかった。パスカルの提案に賭けてみる事にする。ありがとう」
「ん!」
アスベルはパスカルから紙を受け取り、急いで宿屋から出て行った。
私はパスカルに抱きついた。
「すごいね、パスカル!」
「えへへ、ありがと!後は上手く行けばいいんだけどねぇ…」
「そうだね」
「さて、俺たちも大統領府へ向かうか」
「そうですね」
「アスベルのところ、行くの?」
「うん。迎えに行こう!」
私たちはアスベルを迎えに、大統領府へ向かった。