「リチャード!よくもここまで…!」

王座に座っていた男性がこちらに気づき、剣を抜く。
この人がセルディク大公か…。この人を倒せば、リチャードは元に戻る!


「王都は我が軍勢により完全に包囲されています。…あなたはもう終わりです」
「貴様…本当にあのリチャードか?」
「何を当たり前の事を…。父上の敵を取らせていただきます」
「今度こそ、兄の後を追わせてやる!王位にふさわしいのはこの私だ!」



剣を構えて襲ってくるセルディク。リチャードの下に駆け寄り、私は詠唱を始める。
なんとしてもリチャードは守らないと!


「スパークウェブ!」


セルディクに放った術が決まったのを見て、アスベルとソフィが突っ込む。


「仁麗閃!」
「邪霊一閃!」


アスベルとソフィの技が決まり、セルディクは後ろにのけぞる。


「みんな、どいて!フラッシュティア!」

その隙を見逃さず、シェリアの放った術によってセルディクは地に倒れた。
だが、すぐに立ち上がり詠唱をしていたパスカルの下に走っていく。
その剣を炎が纏ったのを、私は見逃さなかった。



「パスカル!危ないっ!」
「これで終わりだ!魔王爆焔破!」


剣を振り上げ、上下に振りかざす。
パスカルは杖で防御するものの、相手の力に押され後ろへと飛ばされてしまった。



「パスカル!」
「名前、パスカルは任せて!」


シェリアが後方に下がり回復術を唱える。
その間にアスベルとソフィがセルディクの動きを止めた。

リチャードも加勢し、セルディクに剣を向ける。


「叔父上、これで終わりだ!ヴァーテクス・ローズ!」

リチャードの放った衝撃が、まるで薔薇のようにセルディクに突き刺さる。

勝負ありだった。
セルディク大公は膝をつき、辛そうに息を吐く。

「ようやく王位を手に入れ、これからという時に…」
「王座は王を選ぶ…」


リチャードはゆっくりと自分の叔父に近づき、見下ろす。


「貴方は選ばれない存在だった。…それだけの事です」


ゆっくりとセルディク大公の近くに寄りその肩に手を置くと、みんなの表情が和らいだ。
リチャードは肉親を殺すなんてせずに済むのだ、と。

だが…



「死ぬ前に理解できて良かったですね、叔父上」


ぐさっという音と、セルディク大公の叫び声が同時に玉座の間に響き渡る。
あのままの態勢で、リチャードはセルディク大公に剣を突き刺したのだ。


「っ!」


床に倒れたセルディク大公の苦しむ顔がこちらを向いている。ゾクリと悪寒がした。
リチャードは立ち上がり、そのままふらふらと玉座に向かうが、途中で振り返り、もはや虫の息のセルディク大公に再び剣を突き刺した。


「おっと忘れていた。これは父の分です」


ぐさりと剣の突き刺さったセルディク大公を見ることが出来ず、私たちは目を背ける。


「リチャード、もうやめろ!」

アスベルが止めると、リチャードはセルディク大公から剣を引き抜き鞘に収めた。


「これでやるべき事はやった。同じ場所で倒れた父の無念も、少しは晴れるだろう…」



すると扉の方から足音は聞こえる。
振り向くとデール公とグレルサイド兵が喜びを隠せない表情で玉座の間に入ってきた。


「どうやら見事に本懐をお遂げになられたようですね。おめでとうございます」
「…デール、外の首尾は」
「内通していた兵が城門を開き、味方を無傷で王都に入れる事ができました。抵抗を続けている兵の数は多くありません。まもなく、制圧できるはずです」


デールさんは嬉しそうにリチャードに笑いかける。


「これで、終わりましたな」
「いいや、終わりじゃない…」


ゆっくりとリチャードは玉座へと近づく。

「これは始まりだ。今日ここからウィンドル王国の新たな歴史が始まるんだ。そうだろう?」
「ははー!」


兵士とデールさんが跪くのに倣い、私たちも肩膝をつく。


「まずは戴冠式だ。僕が王位に就いた事を内外に広く知らしめなければ」



リチャードは、にやりと笑って窓の外を見た。






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