グレルサイドの広場に並ぶ沢山の兵士たち、その一番前にはリチャードとデールさんが立っていた。
これから戦いが始まるというピリピリした空気が伝わってくる。
私たちはその兵士たちの後ろで、デールさんの言葉を聞いていた。


「勇敢なる兵士諸君!これより我々はリチャード殿下に付き従い王都へ向かう」

デールさんはリチャードに何かを言うと、リチャードが前に出た。

「これはウィンドル王国を我々の手に取り戻す正義のための戦いだ。兵士諸君の奮闘を期待する!」


彼は剣を抜くとそれを高々と掲げる。


「剣と風の導きを!」


それに答えるように、兵士たちも繰り返す。


「剣と風の導きを!」


リチャードは剣を真っ直ぐ前に突き出す。


「全軍、出撃!」

沢山の歓声とともに、兵士たちはグレルサイドを発った。


「それでは僕たちも潜入任務を開始しよう」
「殿下の事をくれぐれも頼むぞ、アスベル・ラント」
「はっ!かしこまりました!」
「まずはあの遺跡に戻ろう。そこから上の砦を目指すんだ」


リチャードの言葉に頷き、わたし達は再びあの遺跡を目指した。









「ねぇ、アスベル」
「なんだ?」


道中。
私はアスベルの袖を引っ張り彼を引き止める。


「ちょっと話があるんだけど…」
「何だ?」
「ここじゃ、ちょっと」


言葉を濁し、ソフィとリチャードを見ると、アスベルは私の言いたい事に気づいたみたいで、真剣な表情になる。


「みんな、少し名前と話があるから、先に行っててくれないか?」
「話って…なんだい?」
「とにかく…話があるの。すぐに追いかけるから」


二人でそういうと、パスカルとソフィは頷く。
だが、リチャードの表情は険しい。


「…本当に、すぐに来るんだね?」
「うん、すぐ終わるから!ねぇ、アスベル」
「あぁ」
「…そういうことなら、わかったよ。行こう、パスカルさん、ソフィ」


3人が去っていって、私たちは顔を見合わせる。


「アスベル…ごめんね?」
「いいんだ、それより…ソフィとリチャードのことだろう?」
「うん…様子がおかしいよね、二人とも…」
「あぁ、ソフィはリチャードを警戒しているし、リチャードは何だか…変だし」
「どうしちゃったんだろうね…」
「……俺たちが注意しているしか、ないんじゃないか?」
「そう、だよね…。なんか、ごめんね?つき合わせちゃって…」
「いいや、名前も俺と同じこと考えてるんだなってわかっただけでも嬉しいよ。これからも、何か気づいたら遠慮なく言ってくれ」


アスベルはそういうと、前を向いた。
リチャードたちは少し遠くで止まっていた。待ってくれているのだ。


「さ、行こう。早く行かないと俺がリチャードに怒られるしな」
「なんでアスベルだけなの?」
「…まさか、気づいてないのか?」
「何が?」
「…なんでもない。じゃあ行くか」
「……?アスベル?」



少しだけ微妙な表情をしているアスベルに疑問を持ちながら、私たちはリチャードたちを追いかけた。









「さて、ウォールブリッジ潜入の前に手順を確認しておこうか」

遺跡の出口、すぐ上にはウォールブリッジがあるらしい。
ワープしたら兵士がいて捕縛…ということにならないことを祈ろう。


「ウォールブリッジは南と北に分かれていて、それぞれが別々に動く橋になっている。僕たちが最終的に目指すのは南側の橋をおろして、かつ門を開ける事だ」

リチャードは真剣な表情で続ける。

「その際、南側の橋だけでなく北の橋を上げてしまえば、叔父方の増援を経つ事もできる。できれば両方の橋を僕たちの手で動かしたい」
「分かった」
「ウォールブリッジに潜入したら、まずは北橋を上げよう。叔父方の戦力を少しでも減らして、それから南橋を下ろす方が効率がいいと思う」


リチャードはそういうと、転送装置に乗った。
パスカルが操作し、わたし達はウォールブリッジに潜入が成功した。私たちは武器を構えるが、幸いその部屋に兵士はいなかった。


「ここがウォールブリッジの中か」
「あぁ、叔父の軍勢のただ中だよ。急いで事を済ませないとね。捕まってしまったら最後だから」


外から大勢の人の声が聞こえる。
この中を、私たちは進まなくてはならない…。
ぎゅっと武器を握りなおした。







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