吹き荒れる嵐
私は目を瞑り、ボートの端にしがみ付いた。
痛いほど冷たい雨が、私の全身を濡らす。辺りは真っ暗で何も見えなかった。
「ここで、死んじゃ…駄目」
私は暫く会っていない、大切な人たちの顔を思い浮かべる。
あれから7年という月日が流れた。
アスベルやヒュー、シェリアにリチャード。そして死んでしまったソフィ。
大切な、かけがえのない私の友達。
みんなのことを想ったら、不思議と元気がでてきた。
船が揺れる。
船員たちの叫び声がする。
「(あぁ…)」
私には、どうすることもできない。
ごめんなさい、ごめんなさい…。
唇を噛み締めた。
「また、だ…」
私は、誰かを犠牲にする事でしか立っていられない。
私だけ、逃がしてもらった。
船はもう沈みそうだ。
…私の、家だった船。私の家族…、お父さん…
脱出するとき、お父さんは私の腕を掴み言った。
「生きろ、お前は生きるんだ。それが私の望みだ」
「おとう、さん…」
意識が、だんだん遠のいていった。
最後に頭に浮かんだのは、花畑で見た美しい朝日だった。