星の核は不気味なほどに光っていた。今にも飲み込まれそうなほどの輝きを放っている。星の核を見ているだけで、とてつもない不安に襲われた。
不安と緊張でうつむくと、アスベルに肩を叩かれる。

「名前、キツくなったらいつでも言ってくれ」
「え…?」
「そうよ、絶対に無理しちゃ駄目。みんなで帰るって約束したわよね?」
「そうそう!名前が倒れちゃったらあたし、泣いちゃうよ〜?」
「ああ、できるだけ俺たちでカバーする。遠慮なく言ってくれ」
「名前もリチャードも、みんなも…守る」
「ええ、誰一人欠けることなく、ここから帰りましょう。…何があっても、ぼくはあなたを守り、支えます」
「みんな…」

私が仲間たちの顔を一人一人見る。みんな、目が合うと笑い返してくれた。すると緊張が解ける。…大丈夫、私にはこんなに心強い仲間がいるのだから。
だから私も、自分の一番の笑顔を仲間たちに向ける。ありがとう、という意味をこめて。







星の核の前には、リチャードとラムダがいた。彼らの周りから禍々しい空気が溢れ出ている。
…少しだけ苦しい。ラムダが目の前にいるから、だよね。先ほどまでより強いラムダの感情が伝わってくる。
不安、苛立ち。そして悲しみ。私の心に広がる三つの感情。…これが、今のラムダの感情。

「もうすぐ僕たちは、この世界そのものになる。僕たちの理想そのものに。…こんな汚れた世界、僕たちに優しくない世界…作り変えてしまえばいいんだ」
「お前の言う理想の世界とは、どんなところだ。こんなことをして、実現するものなのか?」
「僕たちが世界そのものになれば、醜い争いの元凶を地上から消し去ることが出来る。争いの元凶、それは人間の存在だ。人は己の欲のために際限なく争いを起こす。人は存在している事自体が罪であり、間違いなんだ…違うか?」
「人間を滅ぼす事で争いをなくす…?そうしたらお前はどうなるんだ?たった一人になって、それからどうするっていうんだ!そんなやり方で争いの元を絶とうなんて間違ってる!」

故郷を追われた時、手を差し伸べてくれた…アスベルはそれがとても嬉しかった、と言う。
私だって…。7年前崖から落ちそうになった時に彼に庇ってもらった。他にもたくさん、たくさんリチャードの優しさに触れたんだ。

「リチャード、あなたならその優しさで争いを無くせる!それに私たちだって協力する!だから…」
「黙れっ!」
「っああ!」
「名前!」
「っ…、物凄い気が発散している…、これは…原素の力か?」

ラムダの負の感情が私の心を押しつぶすかのように圧し掛かってくる。…心が重くなり、気分が悪い。ヒューバートに支えてもらって、かろうじて立てる…そんな状態だった。

「ごめん、ヒューバート…」
「謝るのはなしです。ぼくに掴まっていて下さい」
「これで分かっただろう?今の我が、いかに圧倒的な存在であるか。君たちはもう僕たちを止めることはできないんだ。…なぜなら、君たちは我の手によってここで死ぬのだから!」
「みんな、来るぞ!」
「名前。何があっても、ぼくはあなたを守ります」
「…ヒューバート…」
「絶対に、みんなでまた笑いあいましょう」
「…うん!」

武器を取り出すヒューバートの後ろで、私は詠唱をはじめた。


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