「来るな…この化け物め!」
「チガウ…」
「なんなんだよこいつ!なんでこんなのがいるんだよ!」

見たことがある土地だった。きっとここはエフィネアだ。道には数人の人と、私たちが幼い頃に見たラムダの姿があった。
ラムダの過去を見たときと同じように頭の中に再生される、その光景。物を投げられて、暴言を吐かれる。ひどい…
すると辺りがいきなり光りだした。よく見ると、その光の中心に誰かがいた。ソフィはラムダへと突進して行き、そして激しい戦いの末、ソフィとラムダは二人とも倒れた。

どのシーンを見ても、ラムダは誰にも危害を加えていなかった。なのに、迫害を受けた。
溜まりに溜まった憎しみ、そして星の核へ行けという大切な人からの最後の言葉…これがラムダを動かしていたのだ。

すると場面が切り替わった。

今度は少し驚いた、幼い頃の自分たちが倒れていたのだ。それと同時に理解する、あぁ…王都地下での出来事か、と。
すると、私のすぐ近くに倒れていたリチャードが呻く。

目を開くと、リチャードは辺りをきょろきょろ見回し辺りの惨状を目の当たりにした。

「アス…ベル?ソ…フィ…?みんな…」

リチャードが呼びかけるが、誰一人として動かない。

「みんな…どうしたんだ…誰に…やられたんだ…。名前は、どこに…?」

彼は起き上がり、辺りを見回す。すると自身が向いていたのとは逆の方向に、私がいるのを確認して、慌てて駆け寄った。
私を抱き起こして顔を歪める。

「名前!名前!…っ、大変だ…、っあ」

ポタポタ、私の頬に何かが垂れた。
…リチャードの口から流れた血だった。

苦しそうに息を吐き出し、私の頬に付いた血を拭い取ると、悲しそうに目を伏せる。

「はぁはぁ…、僕もここまで…なのか…。…いつかは、僕にも毒をと…思っては…いたけど、まさか…こんなに早く…」

死にたくない…
死にたくないよ…

「…そして、いずれそいつは次の王になる僕にも毒を盛ってくるに違いない」

小さい頃、リチャードが好きだと言ったあの場所で私たちに打ち明けてくれた事実。
リチャード自身、打ち明けたその日のうちにこんなことになると思っていなかっただろう。
でも…なんで?
リチャードは今も生きている。それはとても嬉しいことだけど、毒を盛られて、血まで出たのに…何故?

すると、リチャードの目の前に大きな球体が…、ラムダが現れた。

「っな、なんだ…!?」

……生きる

「え…?」

…生きる…のだ…!

最後に見えたのは、驚いたリチャードの顔だった。


あの日…あの場所でリチャードとラムダは融合したんだ。二人が融合することでリチャードの命は助かり、ラムダも助かった…ということか。
二人は「生きたい」と強く願っていた。ラムダとリチャードはそれで結びついたのかもしれない。





「…リチャード、ラムダ…」
「名前、大丈夫ですか?」
「…リチャードは、あの時からラムダと一緒だったんだね」
「ええ…、7年間も一緒だったという事ですね。…ただ、兄さんたちと再会した時、陛下は昔のままだったと聞きました。…7年間一緒だったはずなのに、何故いきなり…」
「分からない。…でも、私たちとリチャードが一緒に行動していたとき、…本当に色々なことがあったんだ。…それが、ラムダを目覚めさせるきっかけになったのかもしれない」
「…理由が何にせよ、早く二人を止めないと大変なことになります」
「うん。早く二人のもとへ向かおう!」

不気味に光る、星の核はすぐそこだった。

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