コーネルさんが、ラムダを逃がすために亡くなってしまった。
エフィネアに着いた後、炎上したシャトル。その中にいたコーネルさん。ラムダの悲痛な叫び声、そして私に流れ込んでくる負の感情。
私のお父さんも、私を逃がしてくれた。そしてコーネルさんと同じように…

私は最後にお父さんに言われた言葉を思い出す。


「生きろ、お前は生きるんだ。それが私の望みだ」

「生きろ…ラムダ」




私にとって、お父さんがかけがえのない存在だったように…ラムダにとっても、コーネルさんはかけがえのない存在だった。
苦しくて、悲しい。怒りだけが胸の中をぐるぐるぐるぐると回る。
ラムダの心の闇はとてもとても深いものに変わっていくのは、当然のことだった。


「名前、大丈夫ですか?」
「ヒューバート…」
「…怒っているようでしたが、ラムダの影響でしょうか」
「目の前で、大切な人が…いなくなった。ラムダは悲しかった、苦しかった…」
「ええ」
「私も、知ってる。自分の大切な人が、いなくなることを。逃がしてもらったのに、何も出来ない自分に、腹が立って、だから…」
「…だから、といっても。ラムダがやろうとしていることを認めることはできません」
「だけど…ラムダにも…」
「ええ、事情があるのは分かりました。ですが、ぼくたちの目的を見失わないでください。言ってみてください、目的はなんですか?」

目的は、目的は…
リチャードを助けて、そして…みんなで一緒に、また笑いあえるように、大切な時間を共に過ごせるような素晴らしい時間が作れるようにすること。
私がそう言うと、ヒューバートは少しだけ笑って、ええ…と言った。

「ヒューバート、…あのね、聞いてほしいことがあるんだ」
「何ですか?」
「お父さんが最後に言った言葉」
「…」
「私に、生きろって。コーネルさんと同じこと言ったんだ」
「そう…ですか」
「ラムダはね、生きたいって思ってるの。私たちと同じように。…だけど、同じことなのに、どうしてこんなに違うのかな」

私の質問に、ヒューバートが答えることは無かった。
だけど、ヒューバートは私の手を握った。そこから触れるぬくもりを感じる。ヒューバートの、優しいぬくもり。
私がお父さんを失ったとき、傍にいてくれたのはアスベルやリチャード、ソフィ。…そして仲間達だった。間違ったことをすれば怒ってくれた。一緒に笑った、悲しいこともあった。だけど、私の傍にはいつも仲間がいた。

だけど、ラムダは?誰か、傍にいた?苦しい時に、一番必要な人を亡くしてしまった。
リチャードは?…私たちは、気づけなかった。彼が苦しんでいたのに、気づけなかった。

「生きる」
一緒なのに、違う。
何か、他に道はないのか?お互いがお互いを倒す、そんな道じゃなくて、みんな生きることのできる道が。


「名前」
「?アスベル、どうしたの?」
「いや、変わりはないかと思ってな。…だが、少し邪魔だったみたいだな」

私たちに近づいてきたアスベル。視線はヒューバートと繋いだ手。
するとヒューバートが顔を真っ赤にして、慌てはじめる。

「か、からかいに来たんですか兄さんっ!」
「いや、別に俺はからかいになんか…」
「別にいいじゃない。もう公認なんだから照れなくて。ねえ名前」

シェリアが若干にやにやしながらやってくるものだから、ヒューバートの顔は更に真っ赤。リンゴみたいだなあ…。

「それで、何の話をしていたの?二人で」
「生きるって、人によって違うのかな?って話」
「…生きる、か」
「ラムダにとっての生きると、私たちの生きるって、何が違うのかな」
「…難しいな」

アスベルの言葉に頷く。
この答えがわかったら、もしかすると…みんな「生きる」ことが、できるのかな。

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