ラムダとの戦闘が終わった。ラムダは黒い球体に戻り、力も段々と弱まっているのが目に見えるくらいに小さくなっていった。それと同じく、私の中のラムダの感情も弱いものになっていく。
するとラムダが今まで取り込んだ原素が星の核へと吸収されていくのが見えた。恐らく大輝石にも原素が戻るのだろう。…だけど…
ラムダの力が段々弱まる。このままだと、消えてしまうのかな…。

ドクン

「!」

いきなり胸が鳴った。同時に痛み出す胸、な…なに…これ…

「あ、…あ、あ…」
「名前!?」

まずい、体が言う事を聞かない。もしかして、ラムダの影響?
リチャードを置いて立ち上がり、そしてゆっくりと仲間たちの方へ歩いていく自分の体。…なんで、なんで…

「名前、危険です!下がってください!」
「……」

ヒューバートに掴まれた腕を振り払い、そしてラムダに手を差し伸べる。
いやだ、なんで…いう事、きかないのよ!
体のどの部分も私の言う事をきかなくなっている。唯一思ったとおりに動くのは、思考だけ。

ラムダがゆっくりと私に流れ込んでくる。…頭がガンガン鳴って、真っ黒なものが視界を覆った。

「名前ーっ!」
「名前!」

その後のことは覚えていない。だけど、気を失う瞬間…心の中で穏やかで優しい光が現れたことだけは、なんとなく覚えていた。











僕が目を開いた時、僕の一番大切な君が倒れるところだった。
彼女を纏っているのは、先ほどまで自分の中にいたラムダの力。彼女がラムダの影響を受けているのは知っていた。彼女にこちらの感情が伝わるように、こちらにも彼女の感情が伝わってきていた。
彼女は、僕を助けるためにずっと一人で辛いことを我慢していた。仲間に迷惑をかけないよう、確実に僕を救おうと、ずっとずっと考えていた。
だけど僕にはどうすることも出来なかった。僕にはどうしていいか分からなかった。僕は彼女に謝っても謝りきれないことをたくさんしてしまった。それに、もう殆ど自分の意思で体を動かせなくなっていた。…これは彼女と向き合うのが怖い、僕の言い訳かもしれないけれど。

ラムダを受け入れる一方で、誰かに救って欲しいと考えていた。
誰かとは初めて出来た親友のアスベルにソフィ。それに…僕が初めて愛した人、名前。矛盾しているのは分かる。だけど、止められなかった。

彼女を愛すあまり、醜い感情が生まれた。彼女を欲しい、とも思った。愛が燃えていく一方で、段々恐ろしくなっていった。これから自分のすること、彼女も自分の傍においておきたかった。だけど段々と分からなくなっていく自分の思い。そして僕は彼女をフェンデルで刺した。あの時はラムダの意識の方が強かった、だけど確かに僕の思いもあった。大切な君を刺してしまった。

僕はラムダ繭で君に会ったとき、君を忘れることにした。君を傷つけたくなかったのもあるけど、僕が傷つきたくなかったのもあるんだ。だけど君は、そんな僕のことをずっと気にしてくれていた。だから僕は迷った。ラムダと二人で星の核へ行ってしまえば、アスベルたちもそうだけど、大切な君に会えなくなってしまう。悩んだ。悩んだけど、僕はラムダと融合しすぎてしまって、自分の意思で何かをするという事も出来なくなってしまっていた。

僕が僕として意識を取り戻せた時、自分も侵食されているというのに、僕に言葉をかけてくれた君。
それでようやくわかった。僕はこの子を守るんだ、と思った。だから、ラムダと共に消えるという選択肢を選んだ。…だけど、ラムダは強かった。僕一人が消されそうになり、意識を無くしてからのことは、覚えていない。だけど、こうして目を覚ました時に崩れる君を見て、僕は君がいなくなる世界が許せなくて…


僕はさっき彼女に貰った輝石のお守りを無意識に握る。


すると彼女の周りが光に包まれた。



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