星の核は光っていた。私は今まで光というものは「安心」を与えてくれるものだとばかり思っていた。だが、星の核は違う。光自体は美しい、今にも飲み込まれそうなほどの輝きを放っていたが、…不気味な光だった。星の核を見ているだけで、とてつもない不安に襲われる。
それと同時に、ラムダの感情が騒ぎ始めた。…ということは、近くに…


「…いい加減にしろ、僕たちの邪魔をするな!」

やはり、リチャード…それにラムダがいた。彼らの周りから禍々しい空気が溢れ出ている。
…苦しい。ラムダが目の前にいるから、なのかな。ラムダの感情が私にそのまま伝わってくる…ということは、ラムダが何かを憎めば憎むほど、私にもその憎しみが伝わってくるし、ラムダが悲しむと私の心は真っ暗になってしまう…。
星の核を目の前にして、ラムダはやっと自分の願いが叶う。喜びの心、安堵が私に伝わってくると思ったのだが、実際に伝わってくる感情はそれとはまるで正反対のものだった。
不安、苛立ち。そして悲しみ。私の心に広がる三つの感情。…ラムダの感情。

ラムダ、あなたは一体何を思っているの?これから一体どうしたいの?


「こんな汚れた世界…僕たちに優しくない世界など、作り変えてしまえばいいんだ」
『…僕のいる場所は、とても汚れている』
「人は己の欲のために際限なく争いを起こす」
『…叔父は以前父に毒を盛っていた。そしてもちろんこの僕にも同じ事をした…!…それがうまく行かなかったため今度は直接殺しにかかったんだ』
ラムダとリチャード…二人の言葉で、かつてリチャードが口にした言葉を思い出す。


「人は存在している事自体が罪であり、間違いなんだ…違うか?」
「人間を滅ぼす事で争いをなくす…?そうしたらお前はどうなるんだ?たった一人になって、それからどうするっていうんだ!」

故郷を追われた時、手を差し伸べてくれた…アスベルはそれがとても嬉しかった、と言う。
私だってそうだ。7年前崖から落ちそうになった時に彼に庇ってもらった。他にもたくさん、たくさんリチャードの優しさに触れた。
リチャードが苦しむなら、私たちがその苦しみを消してみせる。一人で抱え込むことなんてしなくていいのに。

「リチャード!」

私が彼の名前を呼ぶと、一瞬だけこちらを見た後ニヤリと笑った。

―その身体でよくここまで来れたものだな―

「!!」

頭の中に響く低い声…ラムダだ。私の頭の中に直接語りかけることもできるのか…。

「ともかく、君たちはもう僕たちを止めることはできないんだ。…なぜなら、君たちは我の手によってここで死ぬのだから!」

再び、ラムダの負の感情が強くなる。心が重くなり、気分が悪い。立っていることさえままならない。…だけど、だけどここまで来たのだ。
私は手元にある槍を握り締める。絶対にリチャードを助けてみせる…。ガンガンと頭が鳴るのを無視して、私は詠唱を開始した。


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