悲痛な叫び声、流れ込んでくるラムダの負の感情。
私の経験したことのある感情も流れ込んできた。

コーネルさんはラムダをエフィネアに逃がすため、亡くなった。
私のお父さんは、私を逃がして亡くなってしまった。

状況は違うけど、でもどこか似ていた。


私は最後にお父さんに言われた言葉を思い出す。


「生きろ、お前は生きるんだ。それが私の望みだ」

「生きろ…ラムダ」


私にとって、お父さんがかけがえのない存在だったように
ラムダにとっても、コーネルという人物はかけがえのない存在だったのだ。



シャトルによってフォドラからエフィネアに逃がされたラムダは、孤独になった。
だけど私には、仲間がいた。
アスベルやリチャード、ソフィが私を見つけてくれていなかったら私はどうなっていたことか。

ラムダの心の闇はとてもとても深いものに変わっていくのは、当然のことだった。




「…名前、少し話さないか?」


ふと手を引かれて後ろを振り返ると、アスベルがいた。彼はソフィとシェリアと一緒にいたはずだったのに、いつのまにか最前列を歩いていた私のところまでやって来ていた。
また、先ほどのようにどうしたのかと聞かれるのかな…なんて思いながら彼の隣で顔を曇らせた。
言うつもりは無いのにな。これは単なる我がままだからこそ、あまり他の人には追求してほしくないのだ。


「…別に、いいよ」
「そうか。ありがとう」


アスベルは笑いながら、周りを見回す。
今まで見たことの無いような景色が広がる、この場所。


「とうとう、ここまで来たんだな」
「うん…」
「名前とは、結構長い間一緒に旅したよな」
「アスベルたちがグレルサイドに向かう途中の道に、私が倒れてたんだよね。…あの時は迷惑かけちゃってごめんね」
「いや、そんなことはない。名前がいてくれたからこそ、俺はここまでこれた。…ベラニックでのこと、覚えているか?」

ベラニックでのこと…というのは、あの二人だけで話した夜のことだろう。
私はその質問に、覚えているという意味をこめて頷いた。

するとアスベルは私の手を掴むと、強く握った。
いきなりのことに驚いていると、アスベルは少しだけ申し訳なさそうに笑う。だけど手の力は緩めなかった。


「俺がどうしようもなくなったときに、名前はすぐに気づいてくれる。そして心配してくれる。それが、温かいんだ、とても安心できる」
「え…」
「少しは…他人を頼ってみるのも悪くはないと思いますよ」
「…!」
「弟の受け売りの受け売りなんだけどな。…覚えているか?」

覚えているとも。あの夜、ベラニックで私がアスベルに言った言葉だった。
アスベルの目を見て話すことができなくなり、私は俯く。


「どうしても言えないのなら、俺は聞かない。だけど、…俺たちは仲間だからな」
「…!」
「お前の抱えているもの、どうしようもなくなったら…俺たちが受け止めるから…覚えておいてほしい」


アスベルはそういうと、もう一度微笑んでシェリアたちの所へ戻っていった。

ごめんね、アスベル。ごめんね、みんな。
もう少しだけ、私の我がままに付き合ってね。

絶対に、どうにかしてみせるから。リチャードのことも、ラムダのことも、私のことも。

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