朝起きてパスカルとソフィを起こし(パスカルはなかなか起きない上にイビキがうるさい)顔を洗ってベッドを整えて。
名前の今日の出だしは最高だった。
昨日の夜はグレルサイドのデール邸にお世話になった。今日はウォールブリッジに行って作戦を行う予定なのである。


「パスカル、寝癖」
「ほんと?どこどこソフィ、なおしてソフィー!」
「…名前にやってもらって」


ソフィはそう言うと部屋から去って行く。昨日から少し様子がおかしいのだが、本人も理由を言う気がないみたいなのでそっとしておく。
パスカルは頬を膨らましながら名前の下へやってきたので、名前はその膨らんだ頬を人差し指で指す。するとパスカルの口から「ぶふっ」と息が漏れた。


「名前ー、ソフィが冷たいよー、おねーさん悲しいよー」
「出会いがアレだったもんね」
「えー、最高の出会いだったと思うんだけど」
「…。寝癖なおすよ」
「あ、ほんとー?ありがと!」


上機嫌でベッドに腰掛けたパスカルの髪についた寝癖を櫛で梳く。


「パスカルの髪の色って、何だか不思議だね」
「そーお?姉妹一族みーんなこんな色よ?」
「へぇー。あ、寝癖取れたよ」


ひたすら梳いた結果、綺麗に寝癖は取れていて。
パスカルは「ありがとー!」と言ってベッドから立ち上がった。



「じゃあ下に降りよっか」
「そうだね、朝ごはんとか超楽しみ」
「お金持ちだもんねー、あぁあ、何が出てくるだろ?ステーキ?ステーキとか?」
「朝からステーキとか嫌だよ」


二人で一階におりると朝食の席にみんなもう座っていて。


「おはよう!ごめん、待たせちゃったね」
「おはよう。大丈夫だよ、名前。おいで」

リチャードに手招きされ、名前は彼の隣に座る。
パスカルは向かい側のソフィの隣に座った。顔が少しニヤけてる…
兎に角、朝食を食べる事にしたのだが…そういえば。


「デールさんは?」
「デールならもう食事を済ませて会議に行ってしまったよ」
「リチャードは行かなくて良いの?」
「主役は後から登場するものだからね」
「はぁ…」


とりあえずリチャードを放っておくことにした名前は、目の前の料理に目を向ける。
ウィンドル産高級食材で作られた料理ばかりだと、メイドさんが教えてくださった。


「すごーい!こんなご馳走食べた事がないよ!」
「…おいしい」


パスカルもソフィも嬉しそうに食べていく。
名前も、目の前にあったスコーンにジャムをつけて口に運んだ。


「おいしい!」
「よかったね。…おや」
「な、なに」


リチャードが私の顔を見てクスクスと笑うので、少し怒ったように聞き返すと謝りながら私の頬に手をおき、親指で何かを拭った。


「ジャムがついてる」

ストロベリージャムがついた親指を舐めるリチャードに、私の頬は赤くなる。
するとリチャードはクスクス笑い「ほら、ちゃんとお礼を言わないと」と言った。コノヤロー…!


「…あ、ありがとう……王子」
「…なんで王子って呼ぶんだい?…いつもみたいにリチャードって呼びなよ」
「だって、恥ずかし…なんでもない!」
「呼びなよ」
「…っ、リ、リチャードの意地悪!」
「可愛いね」


頬を膨らますと、リチャードの笑い声が響いた。



「食べてもないのに甘いものを食べた気分になったんだが…」
「おーいお二人さーん、ティータイムはまだはやいよー、って。聞いてないや」
「?…あまい?」





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