アスベルとソフィが戻ってきた後、私たちは話し合いをした。
ラムダは今どうしているのか、ソフィを犠牲にすることなくラムダが倒せるのか…。

みんなが話している間、私はソフィが言った言葉にひどく動揺していた。



「星の核へ行くということは、ラムダの中に入るという事。このまま行けば、ラムダの精神から干渉を受ける可能性がある」

汗が噴き出した。私は今まさにラムダに干渉されているのではないのか?
ラムダの感情が分かる。それはラムダやリチャードを助ける事にも繋がる、と思っていた。だがそれだけではなかったのだ。

もしかしたら、ラムダが私を操って皆を攻撃させるかもしれない。ラムダの感情で支配されてしまい、自分を見失ってしまうかもしれない。
全て可能性の話だが、絶対にないとは言い切れない。



今から、干渉を受けないようにするために花畑へ行く。だが私にはもう既に意味の無いものなのかもしれない…。
このことを皆に言ってしまったら、心配の種が増えてしまう。…じゃあ、私はみんなから離れた方がいいのかも…。

いや、でもそんなのダメだ。ここまで来たんだ。…リチャードとラムダを救うのだろう?
…もし、自分の感情がコントロール出来なくなってしまい、みんなを傷付けてしまいそうになったその時は、…その時は…


手元にある槍を見る。…これは、お父さんに貰った大切な槍だ。…そういえば、槍を始めたのもお父さんの影響だったな。



「(これで…私は、自分の命を…)」


自分がどうなってしまってもいい。ただ、皆が笑って暮らせれば…って、何を考えているんだ。
どうもいつもよりネガティブな思考になってしまう…。これもラムダの影響なのだろうか?

自分を見失わなければ大丈夫だ、きっと。それに、皆が支えてくれる。だから…




「どうしたの?名前」
「え、あ…ソフィ」


花畑へ向かう途中の道。昔ここをヒューバートとアスベルと一緒に登っていったな。…そして、ソフィに会ったんだっけ。
それでその後リチャードとソフィとアスベルと私で、もう一度花畑を…


「名前?名前?」
「あ、ご…ごめん。ちょっと色々考えてた。どうかした?」
「…あのね、ヒューバートからわたしのこと…聞いた?」
「ソフィが、…プロトス1だって事?」
「うん」
「聞いたよ」
「そっか…」


ソフィが少しだけ顔を顰めた。普段あまり表情を変えない彼女だからこそ、少しの変化がよく分かる。
彼女の考えている事がなんとなく分かって、私は小さく笑った。


「ソフィはソフィだよ。私にとって、大切な友達」
「名前…、ありがとう」

彼女に笑みを向けると、ソフィは少しだけもじもじしながら私の方を向く。
どうしたの?と聞くと彼女は私に一歩、近づいた。


「あのね、久しぶりに手を繋いでいい?」
「うん、いいよ」


私が差し出した手に、ソフィの指が触れた瞬間だった。


「いっ!」
「!!」


突然、痛みが走った。ソフィも驚いたように自分の手と私を交互に見ている。
先を歩いていたアスベルたちが私たちの元に駆け寄った。


「どうしたんだ、何があった」
「い、今…ソフィと手を繋ごうとしたら…痛みが走って…」
「怪我はありませんか?」
「私は大丈夫。ソフィは…?」
「……」
「おい、ソフィ?どうしたんだ?」
「…名前、どうして…どうして名前から…」


ソフィは目を見開いて私を見る。
そこで私は悟った。…彼女は私からラムダの気配を感じ取ったのかもしれない。

けれどソフィは言わなかった。ラムダが私の中にいる…なんて皆はおろか私にも言えないだろう。
アスベルたちは私たちを気にかけていたが、ソフィも、もちろん私も口を開く事は無かった。





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