目が覚めると、先ほどとは全く違う風景だったのに少しだけ驚いた。少しずつ覚醒していく意識の中もう一度辺りを見回すと、そこは子どもの頃に訪れたアスベルとヒューバートの部屋であることがわかった。
それと同時に、私の心は先ほどと同じように色々な感情にかき乱された。


「っー!」

なんだというのだ、これは。
自分の感情ではないものが胸の中に直接流れ込んでくる。気持ちが悪い、気分も悪い。

まさか、あの時ラムダに触れたせいでラムダの感情が私にも伝わってきているのだろうか。


そう考えると、ぞっとした。私が今一番感じる感情は、孤独だった。ラムダは、ラムダはもしかしたらずっと一人だったのだろうか。だとしたら、ラムダはどれほど苦しかったのだろう。胸の中は、どれだけかき乱されていたのだろうか。
だからリチャードに憑依して、そしてその力で世界を壊そうとしているのだろうか。ラムダにとって、憎いのであろうこの世界を。



「!…っ…」


いきなり、ラムダの"孤独"の感情が強くなった。ガタガタと全身が震える。
…私はラムダが今感じている気持ちまでわかるようになっているのか?

だんだんと呼吸が乱れてくる。自分の気持ちではないのに、こんなに酷く動揺するなんておかしな話だ。



「名前!?」

ヒューバートの声がした。目を向けると部屋の扉が開いていた。彼が来たのにも気づかなかったほど、私の心は孤独に支配されていたのだ。



「どうかしたのですか?ど、どこか痛いところでもあるんですか?」
「ヒュー、バート…私、私…」
「とりあえずシェリアを呼んできます!少し待っていてください!」
「い、いやっ!」


ここから去ろうとするヒューバートの腕を掴む。彼は驚いた表情で私を見た。それはそうだろう、私の声はとても弱弱しいものだったから。

「名前…?」
「お願い、お願いだから…ここにいて」
「…わかりました」


彼は私に毛布をかけなおし、そしてベッドの隅に座る。毛布の下に手をもぐりこませ、私の手を優しく包み込んだ。
大分落ち着いてきた私を見て、ヒューバートは声をかける。



「体調は、大丈夫ですか?ぼくも回復術が使えます。もしどこか痛いのなら…」
「…大丈夫。それより、あれから…何があったの?」
「…あれからぼくたちはラントへ戻ってきました。今は一旦引いて、作戦を立てることにしたんです。それに、名前も怪我をしていましたし、ソフィも様子がおかしくて…」
「ソフィが…?」
「今はシェリアと話しています。うまくいくといいのですが…」
「…」


ソフィの様子が少しおかしかったのには気づいていた。私がいない間に何があったのかは分からないが、とにかくおかしかったのだ。
何があったのかを聞くと、彼は溜息をついて、私にも言っておかないといけませんでしたね…ソフィのことを、と言った。



それから聞いた。
ソフィがエメロードさんに造られたラムダを殲滅するためのヒューマノイドのプロトス1だということを。
光の力はソフィが私たちに行った分減保全によるものだということを。そして、彼女は今自分の使命…ラムダを倒して自分も消えることを考えている事も。



「そっか…」
「今は、シェリアに任せるしかありません。…だから」
「わかってる。ゆっくり休め、でしょ?…でも時間ないんだよね?私は大丈夫だから、みんなの所へ行こう?」
「ですが…」
「ヒューバート、お願い。それにみんなとも暫く会ってなかったんだし、顔…見たいな」
「…わかりました。ですが無理はしないでください」
「うん、ありがとう」


彼に手を引かれ、私は久しぶりに訪れた彼らの部屋を後にした。






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