12月24日、クリスマスイブ。もちろんこの日もサッカー部は活動をしていた。
当然、マネージャーである私も部活動に参加していたが、正直微妙な気持ちでいっぱいだ。

今日はイブなのよ、イブ。ロマンチックじゃないといけない日なのよ…?
なのに、服装はジャージだし当然働かないといけないから汗かいちゃうし…、ロマンチックの欠片も無い。部活だから仕方ないけど、けど、けど!今日は特別な日だから、なんだか悔しくて胸が一杯だ。

まあ、先ほどから騒ぎ立ててるけど予定なんて入ってないんだけどね!彼氏だっていないし!ああ、自分で言っていて虚しいね!非リア充の(悲しい)戯言だと思って聞き流してくださいね!
はぁ、とため息を吐いて、それから雷門イレブンの練習風景を見る。そして、私はある一点で目を留めた。



「(はあ、今日もかっこいい霧野くん)」


霧野くんは今日も輝いていてかっこいい。ああ、霧野くんと一緒にクリスマス…過ごしたかったな。…ん、でも待てよ?一緒に部活動しているということは、霧野くんとクリスマスイブを一緒に過ごしてるってことだよね?
ということは、私の願いって叶ってる?マジ?マジ?やったー!

…あ゛あ、ヤメヤメ。余計に虚しくなるだけだ。



視線を下に向けて備品チェックをしていると、音無先生に声をかけられた。


「苗字さん、何か足りないものはあったかしら?」
「ああ、ガーゼとか消毒液とか足りてませんね」
「そう…、じゃあ悪いんだけどこれから買出し頼めるかしら」
「大丈夫ですよ」
「それと…」


音無先生がそっと私に耳打ちしてくる。他の人には聞かれたくない話らしい。先生の言葉に耳を傾ける。…ほう、なるほど。
つまりは、今日はクリスマスだから部活が終わった後にみんなにケーキをご馳走してあげたいらしいが先生はこれから用事があって職員室に戻らねばならない。そこで、買出しに行くついでに部員分のケーキを買ってきてほしいようだ。ケーキ大好きな私はもちろん二つ返事でOKした。


「一人だと大変でしょうから、誰か他の人を連れて行くといいわ。そうね…部員分を女の子が持つのは大変だろうから…、霧野くん!」

音無先生が大きな声で霧野くんの名前を呼んだ。
ちょうどドリンクを飲んでいた霧野くんが、こちらへとやってくる。


「何ですか?」
「悪いんだけど、苗字さんの買出しについて行ってあげてくれないかしら。頼んだものが大きいから是非男の子について行ってもらいたいんだけど」
「わかりました。じゃあ苗字。行くか…、苗字?」
「あ、あ、うん!い、行こうか!」
「?」

お、お、おおおおおおお音無先生っ!マジグッジョブ!クリスマスに霧野くんと(買出しだけど)どこかに行けるなんて!私幸せ者です!




…そんなこんなで商店街。クリスマスイブだからか、カップルやファミリーが異様に多い。私と霧野くんもカッポーに見えてるのかな?…いや、それはないか。だってジャージですし!あはははは!ロマンチックの欠片もないよね!あはあはは!でも、それでも私、幸せです!

なんて、一人でうはうはしていると、霧野くんがケーキ屋の前で足を止めた。


「ケーキっていっても…ホールかカットしてあるのか…どっち買えばいいんだ?」
「ホールだと切り方によって喧嘩になりそうだよね。それに持って帰るのも面倒だし…カットで良いんじゃない?」
「そうだな。…お、これ良いんじゃないか?クリスマスケーキセット。大人数にちょうど良いですよ、だって」

霧野くんが指差したのは、パーティ用のケーキセット。いろんな種類のカットケーキがたくさん入っている。うん、これなら種類たくさんだし値段もお手ごろだし良いかも。さすが霧野くん。とりあえずそれを購入して、備品も購入して、いざ帰ろう、という時だった。…雪が降ってきたのだ。


「雪…!」
「すごいな、ホワイトクリスマスってやつか?」
「綺麗ーっ」

霧野くんと二人で見れたのが嬉しくて笑っていると、霧野くんが「そうだ」と私のほうを見てきた。


「商店街の通りがクリスマス限定でイルミネーションで装飾されるのを知ってるか?」
「うん、知ってる!」
「良かったら、見に行かないか?少しだったら、寄り道しても大丈夫だろうし」
「うぇ、あ、も、もちろん!」
「ははっ、何どもってんだよ。じゃあ行くか」
「う、うん!」


突然の霧野くんの提案に驚きつつも、頷く私は本当に幸せ者だ。一生の運を使い果たしているのではないのかってくらい良いことばかり起こるなぁ、今日は。
そんなこんなで商店街に来てみると、夕方にも関わらずイルミネーションが点灯されていた。だけど、まだほんの一部のようだ。


「まだあんまり点いてないね」
「もう少し経ったら綺麗に点いているんだろうな。…あー…、あのさ」
「?どうしたの?」
「もし、苗字さえ良かったら…部活が終わった後にもう一度来ないか?その、イルミネーションを観に…」


少しだけ顔を赤くしてそう言った霧野くん。彼と同じように、きっと私の顔も真っ赤だ。





こ、これはサンタさんからのプレゼントか何かですか!?





20111227



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