朝、俺はいつものように自分のベッドで目を覚ました。窓から差し込む朝日を見ながら、俺は昨日のことを思い出す。
俺は…苗字さんにフラれたんだ。


俺は一年生の頃から苗字さんが好きだった。
最初は単純に一目惚れだったんだが、あの出来事があってから…俺は彼女を本当に好きになった。

恥ずかしながら俺は彼女とまともに会話をしたことがなかった。
それなのに昨日、気持ちをぶつけてしまった。きっと苗字さんは困っただろう。…今になって少しだけ後悔している。
だけど…、俺は彼女に気持ちをぶつけて良かったとも思う。矛盾しているけど、どちらも俺の気持ちだ。


告白をしてみて、色々なことを知れた。もちろん、霧野たちに助言を貰ったこともそうなのだが、何より…苗字さんがどんな気持ちなのかも知ることが出来たし。



「中途半端な恋愛は嫌…か」


俺はもちろん、中途半端な恋愛をしたいわけじゃない。本気だ。
あの時から、俺は苗字さんしか見えない。…だけど、苗字さんは違うだろう。

俺との接点はクラスメイトってだけ、特別仲がいいわけじゃないし、同じ部活というわけでもない。
今思えば、何故当たって砕けろ!みたいなことをしたのだろう。冷静に考えてみると、どう考えてもアレは無謀すぎた。だけど…

俺は昨日部室で霧野たちと会話したときのことを思い出す。



“彼女のことを知り、俺のことを知ってもらう”


友達大作戦、といったところか。苗字さんに話しかけるだけでその日の体力を全て消費してしまうような気がするのに…。果たしてその作戦が無事遂行できるのかどうか…。
いや、あれこれ考えていても駄目だ。…とにかく、苗字さんに話しかけないと何も始まらない。

学ランに腕を通しながら、俺はドキドキと鳴る胸を押さえつけた。



















「おっ、おはよう」


俺は昨日のことが気になって校門の裏で神童を待っていた。ああ、わかっている。自分でも過保護だと思う。だけど、しょうがないだろう?親友には幸せになってもらいたいんだ。
俺が待ち始めてから10分後に、やけに上擦った声が聞こえてきた。まさか、と思って覗いてみると神童と苗字がいた。

神童が挨拶をしたのにも関わらず、苗字は何も言わない。彼女は呆気にとられていた。…まあ、それはそうだろう。昨日フッた相手が自分に元気よく挨拶してくるなんて。俺だってそんな状況になったら混乱する。



「お、おはよう!」
「お…おはよう」


2回目の神童の挨拶に、苗字はハッとしたようになって、それから若干戸惑いつつ返事を返した。
すると神童の顔が見る見る明るくなっていくじゃないか。



「あの、よかったら…一緒に教室まで行かないか?」
「…今日、日直だから」
「じ、じゃあ玄関まで!」
「…別に」
「(これは…先に行くべきだな)」


俺はまだ会話を続けている二人を置いて、校舎へ向かった。
神童、今のはかなり良かったぞ。話しかけるだけで精一杯だったのにな…、すごいよ。


ほんの少しだけど、進展した二人の仲。それが俺は嬉しくてたまらなかった。
だから、その後一人で教室にやってきた神童に小さく「良かったな」と声をかけたら、恥ずかしそうに…でも嬉しそうに神童は笑った。




20111204





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