「苗字さんに…フられた」



部室に戻ってきた神童。泣いていたから、まさかとは思ったのだが…やっぱり最悪の結果になってしまったようだった。
盛り上がっていた部室が一気に暗くなった。それに責任を感じたのか、更に気分を落ち込ませる神童に俺はため息をつく。…さてと、どうするかな。


神童は一年生の頃から苗字のことが好きだった。
部員でそのことを知らないヤツはいないくらい、有名な話だ。

苗字といえば、顔立ちは可愛いというよりは綺麗系で、成績優秀、スポーツもできる絵に描いたような女子だ。
ただ、…他人を寄せ付けないというか、まあ言ってしまえば友達が少ない、いつも自分の席で本を読んでいるような…そんなやつだ。気の許せる友人に見せる笑顔は、俺も綺麗だと思ったことはあるが、殆ど話したことが無いため、彼女の性格が分からない。外見のことばかりで申し訳ない。まあ、そんな不思議なやつに何故神童が惚れたのかは…神童本人に直接聞いてくれ。


とにかく、ずっと想い続けていた苗字に告白をすると決めたのが一週間前。ちなみに提案者は、神童のウジウジさに痺れを切らした浜野だった。
それから一週間、後輩や先輩の力を借りながら神童告白作戦を計画して、今日…決行した。…のだが、結果は駄目だった。…まあ、とりあえず神童にどういう状況だったか聞いてみよう。






「…で、最後に俺が言葉に詰まったら…“ハッキリしない人は嫌い”って、言われたんだ」


神童の話をまとめると、こうだ。
彼女に俺たちで考えた告白の台詞を間違えずに言った、が断られた。理由を聞くと、中学生のお遊び恋愛は嫌だとバッサリ斬られた。それでも本気だ、と言うと知らないわよそんなの、それから好きでもない人とは付き合えない、と言われた。まあ、…苗字的に考えると、別に悪いことは言っていない。神童の気持ちを考えると、複雑だがな。



「だけど、俺は…諦めることなんてできない…」
「…止めとけよ神童、苗字よりイイヤツなんていくらでもいるだろ?ンな酷い女止めちまえよ」


倉間の言葉に、神童は首を横に振る。


「それでも、俺は苗字さんが好きなんだ」


…告白を断られても、彼女が好きと言う神童。それだけ本気ってことなんだな。……よし。
俺が立ち上がると、他のやつらが俺に視線を向ける。


「神童、諦めるな。俺もとことん協力するからさ」
「霧野…」
「だよな!苗字に神童が本気だってこと知らしめようぜ!」
「浜野…」

俺の言葉に浜野が賛同すると、他のみんなも頷いてくれる。倉間も、神童の言葉に心動かされて、頷いていた。



「みんな…、…ああ、俺は諦めない。もう一度、苗字さんに告白してみる!」
「いいぞ、その意気だーっ!」
「じゃあ早速行って「ちょ、ちょっと待て神童!」…?どうしたんだ、霧野」
「いくらなんでも早すぎる。また玉砕したいのか?」
「早い…か?」
「…早いだろ。…いいか、もっと作戦を練る必要がある。…それから神童、お前はもっと苗字のことを知って、苗字に自分のことを知ってもらう必要がある」


俺が話し始めると、勢いに乗って立ち上がっていたみんなは再び床に座る。俺も同じように座って、説明を始めた。


「…?」
「今までは見てるだけだっただろう?今度は知って、知ってもらうんだ。好きなものとか、趣味とか…何か合うものがあったら、そこから話を展開させていったりすればいいだろう?近づくことが大切だと思うんだ」
「それもそうですね」
「神童、第一の作戦を発表するぞ」
「あ、ああ…」
「“友達”になろう、だ」
「友達に…なろう…?」
「友達になれば、自然と一緒に話す機会も増えるだろう?お前のことをたくさん知ってもらって、苗字のことをたくさん知るんだ」
「…友達になれば、変わるかな…?」
「変わるさ。大丈夫だ」


俺がそう言うと、神童は何かを考えるように俯き、それから顔をあげて、強く頷いた。



「ああ、分かった。俺、やってみるよ」





20111112




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