「お姉さま!」


私がシャール邸に戻ると、義妹のドロッセルが執事のローエンを引き連れてこちらへと走ってきた。
そして嬉しそうに小さな箱を私に差し出す。


「これは?」
「今日はお姉さまとお兄さまの結婚記念日でしょう?だから、私…お姉さまに似合うネックレスを選んでみたの」
「わあ、ありがとう。とても嬉しいわ、ドロッセル。開けてみてもいいかしら」
「もちろん!」

リボンを解き、薄いピンクの箱を開けると…シルバーの装飾で、青色の美しい宝石が中心についたネックレスが入っていた。

「綺麗…」
「この石はアクアマリンって言うの。美しい若さと幸せな喜び、幸せな結婚を象徴するって言われてるの」
「ふふっ嬉しい、本当にありがとう」
「お姉さまに喜んでいただけて本当に良かった!実は、お兄さまに渡したものと対になるのよ。ほら、ここに窪みがあるでしょ?」

ドロッセルがアクアマリンの端を指差す。

「お兄さまのものとお姉さまのものをくっ付けると…ハートの形になるように作られているの。ペアネックレスって言うやつ。最近流行っているのよ」
「なんだかとてもロマンチックね…気に入ったわ、早速つけてみるわ」
「気に入ってくれて嬉しい!大好きよ、お姉さま。ではまた夕食の時に会いましょう!ローエン、私は部屋に行くのでここまでで大丈夫、付き合ってくれてありがとう」
「畏まりました」

ローエンが深々とお辞儀をすると、ドロッセルは自室へと戻っていった。


「奥様、私からも…贈り物をしてよろしいでしょうか?」
「え、ローエンさんからもあるの?」
「ええ、奥様には大変お世話になっていますから。…つまらない物ですが…」
「ありがとう、ローエンさん。開けてみてもいいかしら?」
「ええ」


茶色の包装を解くと、中から出てきたのはアンティークの懐中時計。とてもオシャレで、ローエンさんらしい贈り物だ。


「とても綺麗な物ね…、本当にありがとう」
「奥様に喜んでいただけてとても嬉しいです。…それで、今日はどちらまで?」
「やだなあ、ローエンさんは知ってるんでしょ?」
「…はあ、…あのように肌を露出して広場で踊るなんて…クレイン様が知られたら卒倒されますよ」
「でも…お屋敷にいるだけじゃつまんないし…」
「…分かりました、ですがくれぐれもお気をつけください。奥様に何かあれば…」
「大丈夫!私、これでも結構強いから。クレインにも、夫婦喧嘩で負けたことないでしょ?」
「…くれぐれも無理はなさらず」
「ええ、分かってる。…じゃあ私も部屋に戻るわ」
「畏まりました」


ローエンに別れを告げ、寝室に向かう。
すると、そこには何だか疲れた様子のクレインがいた。


「クレイン、仕事は終わったのね」
「ああ、名前か…。…だが、15日後にナハティガル王がいらっしゃる事が決まってね…」
「ナハティガル王が?な、何で…」
「それが、分からないんだ…詳しいことは後日、使者が伝えにくるとかで…」
「何にせよ…一波乱ありそうね」
「…ああ」

クレインはソファに座って、ガクリと項垂れる。…彼はナハティガル王に対してあまり良い感情を持っていなかった。
15日後も…あまり良い話をしに来るとは思えない。

私はクレインの横に座って、彼の手に自分の手を重ねる。



「名前…」
「大丈夫、私は…いつでもクレインの味方だから」
「…ああ、ありがとう。…ああ、そうだ」

クレインはズボンから何かを取り出すと、私に差し出した。
黒い小さな箱を開くと、美しいピンク色の宝石がはめ込まれた指輪が姿を現す。


「今日は結婚記念日だからね。…あれから6年も経つんだね」
「…そうね」


私たちは大恋愛の末結婚した。彼は六家の貴族、私はカラハ・シャールの商人の娘…。幼馴染ではあったが、身分の違いに悩む日々だった。
だけど、クレインが周りを説得し…私も彼と一緒になるために貴族の作法を徹底的に勉強した。…そして、19の時にようやく2人の願いが叶ったのだ。

今では5歳になる息子もいて…。忙しいけど、幸せな日々を送っている。


「これからも、傍にいてほしい」
「…もちろん。ずっと、一緒だよ」


背中に手を回し、私たちはお互いを強く抱きしめあう。
…これからも、ずっと一緒に…。





20110914




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