俺は、サッカー部のマネージャーの半田名前さんが好きだ。
いつも元気で明るくて…可愛くて。キラキラと光って、笑顔で…いつも彼女の周りには友達がたくさん。…俺とは正反対。

どうしても彼女と話をしたくて…、だけど勇気が出なくて話かけれない…悶々とした日々を送っていた。
彼女はきっと、自分みたいにネガティブな奴じゃなくて、明るくてかっこいいキラキラした人当たりの良い人が好きなんだろうな…。俺が話しかけても迷惑だろうな…。
ネガティブなのが、更にネガティブになって…、彼女を見るだけで苦しくなる日々が続いていた時だった。…彼女が男に告白されている所を見たのは。


同級生の、男だった。校舎裏で告白を受けている彼女を見た瞬間、俺の心は嫉妬でいっぱいになって…。
気付いたら俺の足は校舎裏に向かっていた。

告白を断った後の半田さんに近寄り、顔を歪める。頭には嫉妬の二文字しかなく、俺はいつものネガティブを隅に追いやり「あなたが告白されるなんて…世も末ですね」と酷い言葉を投げつけた。そして、すぐに「ああ、やってしまった」と顔を真っ青にする。絶対に怒ってるよな、とかああ嫌われてしまった、とか部活どうしよう、辞めようか、いやでも…なんてパニックになっていると、彼女はきょとんとした顔のまま俺を見つめていた。



「え、速水くんって…そういうキャラだったの?」
「…へ?」
「いやあ…、なんというか意外…というか、ビックリしちゃったよー」
「……」


どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう…!
違いますよ、こんなキャラじゃないんですよ…今のは一時の気の迷いというか、なんというか、あれ?あ、あれ?ど、どうしよう!


「速水くん…?」

半田さんが俺を覗き込んでくる…、っ…可愛い…じゃなくて!
ああ、とりあえず現状確認。俺は彼女に酷いことを言った。でも彼女はあまり気にしてなさ気…?でも本当のことを知ったら幻滅されるかもしれない。…あ、あのキャラで通すのが…一番良い選択肢なのかもしれない…。

…あの時の俺は何故かそう思って、彼女の前では辛辣なキャラクターで通すことに決めたのだった。








…結果は成功、だった。彼女と話す機会も増えた…というより、殆どの行動を共にするようになった。俺が、彼女に酷く当たることによって。
…少しだけ罪悪感はあったけど…彼女と話せるようになって、俺は段々と調子に乗ってしまって…。様付けの強要や、暴力に近いことまでしてしまったこともある。だけど、彼女は俺の隣で笑ってくれていて…俺はこの関係が好きで止められなくなってしまって…。


でも、たまにすごく不安になるんだ。
…本当にこれで良いのか、と。彼女の前で見せる自分は、偽りの自分だから。…矛盾しているけど、…辛くて仕方ないんだ。
だから、この間彼女をデートに無理矢理連れて行ったときに…聞いてしまった。「こんな俺は、嫌ですか?」…と。


ネガティブな俺は嫌ですか?偽りの自分は嫌ですか?…両方の意味を含めていた。
だけど、俺は彼女の答えが聞きたくなくて…すぐに席を立った。俺は怖いんだ、彼女との関係が壊れるのが…怖いんだ。


だけどズルい俺は今日も彼女の前で演じる。…だけど、…昨日俺は見てしまったんだ。…彼女が告白されるところを。俺は嫉妬で頭がいっぱいになり、思ってもないことを言ってしまった。そのことで、通常より3倍増しのネガティブ状態に陥り、朝練で集中できなかった。…その後着替えて、教室に向かおうとしていたら…、彼女に呼ばれて二人きりに…。





…思えば、きっかけはいつも彼女が告白される場面を見ることだった。
俺が演じ始めたのも、そして…彼女が俺に…


「つ、まり…名前が、俺を…好き?」
「そ、そういう事です…」



っ、こ…これは…夢か何かですか?





20110914



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