休日、私は速水さまに付き合って…付き合わせていただいて、ショッピングモールに買い物に来ていた。
速水さまの真後ろをキープしながら、彼の買い物を見守ってた。

CDを買い終わった速水さまが私を振り返って、呆れたようにため息をついた。


「…で、いつまで後ろにいるつもりなんですか」
「え…」
「ずっと後ろに着いてくるなんて…、正直キモいですよ」


え、じゃあどうすれば良いんだ。
後ろから着いてくるのが駄目ならめちゃくちゃ遠くから速水さまを見守っていればいいのかな?いや、でもそれは結局後ろから着いていくことになるし…、ううーん…どうすれば…、ハッ!


「ま、前から速水さまの様子を窺えば良いんですね!わかりました!」
「……はあ?本当に馬鹿ですね…、隣にくれば良いでしょう」
「え…隣?」
「…普通に考えて、ここは隣に来るのが当たり前だと思いますけど…」


速水さまが怒らずに…呆れた、だと!?
まさかの事に驚いていると、速水さまが私から顔を背けた。


「だ、だから…。俺の隣を歩けば良いんですよ、名前は」
「っ…!」


う、うわわわわわわわ…!き、聞いた?聞いた?今の言葉!
速水さまがかっこよすぎて卒倒してしまいそうになるのを何とか堪えて、私は歩き始めた速水さまの隣に移動した。

近くで見る速水さまは本当にかっこよくて、…やっぱり私、速水さまが好きなんだなー…と改めて実感。
一人、悦に浸っていると速水さまが「名前」と声をかけてきたので、すぐに現実世界へ戻る。


「な、なんですか?」
「あなたは…どこか、行きたいところはないんですか?」
「え…?」
「…せっかく、ここまで来たんですから。…どこか行きたいところはないんですか?」


イマ、イッタイ、ナニガ、オコッテ、イルンダ?
速水さまが…、私などに気を遣ってくださっているのか?

いつもとは明らかに違う速水さまに驚きながら、私は「じゃあ、カフェに入りたいです…」と速水さまに伝える。
すると速水さまは近くにあったオシャレなカフェに入っていった。


…?やっぱり、いつもと違う。速水くん、じゃなくて速水さま。
そんな彼に疑問を持ちながら、私は彼を追いかけて喫茶店に入った。





奥の席に案内されて、速水さまと向き合うように座る。少しだけ曇った表情は、教室で見る「ネガティブ気弱キャラ」のもので…。
もしかして何かあったのではないか、とか私もしかして何かしちゃった?とか…色んな考えが頭の中をグルグルグルグル。

店員さんが持ってきてくれたパンケーキが冷め、アイスティーの氷が溶けるのも構わず、一向に喋らない速水さまのことばかり考える。
すると、ブラックコーヒーを飲み続けていた速水さまが、ふと口を開いた。



「名前、は…」
「!……」
「こんな俺は、嫌ですか?」
「え…?」
「……なんでも、ありません」


質問の意味が分からず聞き返すと、速水さまは視線を逸らしながらため息をついた。


「…それより、まだ食べ終わっていないんですか」
「あ!」
「…俺はもう飲み終えたので、行きますよ」
「えええええ、ちょ、待ってくださいよ!」


私の制止を聞かずに、速水さまは立ち上がりお会計を済ませ、店を出て行ってしまった。
それを追いかけるため、私も急いで立ち上がりお会計を済ませてお店を出た。…さらば、パンケーキとアイスティー。



それから速水さまと少しだけお店をまわって、稲妻町に帰った。
先ほどとは打って変わって、いつも通りの速水さまだったけど…先ほど見せた表情が、どうしても気になって仕方なかった。




20110904




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