俺は名前に、全てを打ち明けた。


一年生の頃からずっと好きだったことも、勇気が出なくて中々声をかけることができなかったことも、あの日嫉妬して酷く当たってしまったことも、それから彼女の前で酷い自分を演じていたことも、それに喜びを覚えていたことも、だけど罪悪感の中で悶々とした日々を過ごしていたことも、ネガティブな自分にコンプレックスを感じている事、そして彼女の前で演じた自分に憧れ、そして嫉妬していたことも…それで頭がいっぱいになって、彼女を無理矢理抱こうとしたことも、全て全て打ち明けた。

途中で泣きそうになったけど、俺はそれをグッと堪えて…頭を下げた。



「本当に、すみませんでした…」
「……」


彼女を見上げると、傷ついたような表情をしていた。
それは…当然のことだろう。俺は、彼女を騙していたんだから。酷いことも散々しておいて、でも心の片隅で彼女は自分のことを許してくれると思っていた。だけど、彼女の傷ついた表情を見て、それは俺のただの願望でしかなかったことに気付く。

ああ、もうおしまいだ。



俺はふらふらとした足取りで、階段を降り始めた。もう駄目だ、駄目だ。
心の中でたくさんの感情が入り混じる。悲しみを中心に、自分への怒り、苦しみ…行き場の無いこの感情を、どうすればいいのか…俺は分からない。分からなかった。そしてふと考える。はたして俺だけが悪いのか?…と。

彼女が勘違いしなかったら、彼女が俺をさま付けで呼ばなかったら、敬語を使わなかったら、酷いことをされて嫌だと言っていたら…俺がこんなに苦しむことはなかったのではないのだろうか?

そこまで考えて、俺は身震いをする。
ああ、俺は本当に汚い人間だ。責任転嫁もいいところだ。…きっと以前から心のどこかで、全て自分のせいではないと思っていたのだろう。


俺は、本当に駄目だ。…無理なんだ。本当の俺も、偽りの俺も汚くて、全てが汚い俺なんかが、名前…っ、半田さんに好かれるなんて、無理だったんだ。




「ま、待ってっ!」


彼女から声をかけられる。きっと俺を罵るんだ。最悪で最低なやつだと、罵るんだ。
そう言われて当然だけど…、ズルい俺は彼女の言葉を聞きたくなくて、すぐに逃げ出した。















私は、ショックを受けた。

最低な自分に、ショックを受けた。




大好きな彼を追い込んだのは、他でもない自分で。
私ばかりが浮かれていて、彼はずっと一人で悩んでいて。…どうして、気付かなかった?…いや、本当は気付いていたのかもしれない。付き合う前に買い物に付き合った時に見せた表情、そしてその時にされた「こんな俺は、嫌ですか?」という質問…。付き合ってからも時々見せる暗い表情…、気にはなっていた。だけど一人浮かれて、浮かれて浮かれて。

知らなかった、で済ませればそこまでだ。…だけど、私は…それで済ませたくない。
だって、私は速水鶴正のことが好きだから。どんな彼でも好きだから。ネガティブでも少しだけ酷くても、私は「速水鶴正」が、好きなんだから。
だからこそ、私は気付くべきだった。鶴正のことが好きなら、本当に好きなんだったら、気付くべきだった。


…、駄目だ。
過ぎたことを言っても仕方ない。今は、鶴正を追いかけないと。







20111109





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