つ、ついについに…速水さまに告白してしまった…!
本当はずっと告白なんてしない予定だったんだけど…なんかノリで告白してしまった。自分ももちろん驚いているのだが、速水さまも私からの突然の告白に目を丸くしている。あああああ、私は何て事をしてしまったんだ…。ど、どうせ告白するんならもうちょっといい感じのシチュエーションで告白したかった。あああ、なんでこんな所で「中途半田」を発動するんだよーっ!私の馬鹿、馬鹿っ!

私が頭を抱えながら混乱していると、速水さまが「本気、なんですか…?」と私に聞いてきた。
…もちろん、本気だ。あの日…、速水さまと初めて話してから何だかんだで今日までずっと一緒にいた。…同じ部活の同級生でしかなかった速水さまと関わって、新たな一面を知ることが出来たり、辛辣な中にも優しさがあったりして…何より一緒にいるのが楽しくて。気付いたら、速水さまの事が好きになっていた。

でも、速水さまは速水「さま」だ。とても告白なんて出来なくて。…そして私にそんな勇気もなくて。そして二人でいる時もいい雰囲気になんてなることはなくて…。
だけど、不本意だったけど…ひじょうに不本意な形だったけど…速水さまに自分の気持ちを知ってもらえた。…ええい、もう当たって砕けろだ!


「ほ、本気…です」
「……」


すると速水さまは何かを考えるかのように目を瞑った。
少しだけの沈黙。その間に私は…ああ、やっぱり私から告白なんて嫌だよね、とかフられたらどうやって生きていけばいいのか…などと、色んな事を考えてしまう。
はあ、っとため息をつくと速水さまにギロリと睨まれた。


「何ため息ついてるんですか」
「え、あ…フ、フられた後どうしようかな…って」
「俺はまだ何も言ってませんが」
「ううっ、すみません…」
「……」


再び、速水さまは黙る。少しだけ曇ったその表情に、ああ…やっぱり迷惑だったよね…なんて思いながら、ヘコむ。こんな中途半端で可愛くない女に想われるのは嫌だよね。自分が速水さまだったら絶対に私みたいな女は嫌だもん。…なんて、ネガティブになっていると、速水さまが私の顔を覗き込んでいた。あまりにも近かった速水さまの端正な顔。私は咄嗟に体を後ろに逸らした。


「何で退くんですか」
「だ、だって…近い…し」
「…はあ、この程度でこんな反応では…これから持ちませんよ?」
「…へ?」
「……」


そのまま、反対方向を向いてしまう速水さま。速水さまの言葉の意味がわからなくて、戸惑う私。
すると速水さまが顔だけをこちらを向けて、呆れたようにため息をついた。


「…物分りが悪い人ですね…、顔を近づけただけでこんなに戸惑って。これからもっと近づかないといけない時が来るのに…そんな調子だと身が持ちませんよ?…ちゃんと耐性をつけておいてくださいね」
「…え、あ…それって…」
「…はあ、…。………俺も好きですよ」
「!!!!」



ガーン



別に、嫌なことがあったわけではない。むしろ逆なのに…、心の中でそんな音が鳴り響いた。何かに例えるならば…そう、教会の鐘なんかが近いんじゃないのかな。
何も考えられなくて、私は速水さまの名前を震える声で呼ぶことしか出来ない。


「…鶴正」
「…え、」
「…今度からは、そう呼んでください」
「つ、鶴正…さま」
「…はあ、まあいいでしょう」


そう言うと速水さま…、いや…鶴正さまはスタスタとこの場から去って行く。
私はそれを追いかけることも出来ずに、その場に座り込んだ。








あー…、何だか頭がごちゃごちゃでワケ分からないよ…。
と、とりあえず…両思いだった、ってコトで良いんだよね?…ううっ、何だかそう自覚したら恥ずかしくなってくる。…ああ、これぞ嬉し恥ずかし。

とにかく、ずっとこの場所で惚けているわけにはいかない。私は立ち上がって、頬っぺたをパンパンと叩く。…よし!
今から…鶴正さまの彼女…かあ。ルンルン気分を抑えきれず、私はスキップしながらその場を後にした。

物陰から、彼が複雑そうな顔でこちらを見ていたなんて…私は知る由も無かった。





20110930





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