サンドリアスは滅びるんだ

私が彼女にそう告げた時、彼女は私にお疲れ様と言いながら微笑んだ。それから、静かに涙を流した。
いつものように沈んでいくサンドリアスの夕日、皮肉なほどに爽やかな風が吹き抜ける大地で、私は彼女を強く抱きしめた。


幼いころに泥だらけになりながらも駆け回った大地。私たちは裸足でかつてのように、走り回る。すべてすべて忘れて駆け回った。
サンドリアスの日差しは強い。袖を捲りあげて、私たちはただただ走る。砂が舞う。美しいサンドリアスの宝が私たちを包み込み、それから私たちは砂の中に倒れこんだ。



「懐かしいなぁ」
「ああ、そうだな。…昔は毎日、一緒に遊んだな」
「カゼルマは、泣き虫だったよねぇ。いつも私に置いていかれそうになったらひぃひぃ泣いてた」
「…君はあの頃からお転婆だったな」
「どうせまだ子供ですよー!」



ああ、私たちは子供だった。今も、昔も子供だった。いや、それ以前に…小さいのだ。私たちは、悲しいほど…小さいのだ。
この星の運命を変えることのできる力を持たない、無力で小さな子供。だからこうして、駆け回り…思い出さないようにするのが精一杯の、精一杯の抵抗だった。

大人に、なりたかった。君と、…名前と長い時間を共有したかった。
きっと君も同じ想いを抱いてくれているだろう。



「ねぇ、カゼルマ」
「……なんだ、名前」
「…、手を、繋いでも良いかな」
「…ああ」


重なり合った手をしっかりと絡めあって、砂の中に埋まる。空が澄んでいる、風が吹く。隣にはいつもと変わらない、君。
この当たり前も、もうすぐ終わるのだ。



「好きだ」
「え、…え?い、いきなり?」
「…好きだ」
「……カゼルマ」


私がいつもと違う態度を見せたからか、名前が身体を起こし、そして私の顔を上から覗き込む。
苦しい。苦しいほどに愛しかった。
その頬に手を伸ばし、撫でる。

私の頬に、雫が落ちた。



嗚咽を漏らしながら泣き続ける名前を、私は強く抱きしめる。




「名前」
「ふっ、う…っ、カゼルマ…好き、好きっ」




この宇宙の中で、私たちはちっぽけな存在だろう。私たちの意志とは関係なく、当たり前は変わっていく。すべてが変わっていく。
だが私はしがみついてやる。この大地に、この生にしがみついてやる。このかけがえのない時間にしがみついてやる。




今はこの命が尽きるまで、どうか君の傍に




20140101


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