気にくわない気にくわない気にくわない気にくわない!
アイツらの中心でニコニコ笑うアイツが気にくわない。ヒラリと手を繋いで買い物に行くアイツが気にくわない、バルガに頭を撫でられて嬉しそうに微笑むアイツが気にくわない、リュゲルとガンダレスの野郎にすり寄られて顔を真っ赤にしてるアイツが気にくわない。

……ボクの前だと怯えた顔をするアイツが気にくわない。




「少しは優しくしてあげないと、あの子離れていっちゃうわよ?」
「はァ?何言ってんのさ、ヒラリ。ボクはあんな奴どうだっていいんだよ」
「はぁ…素直じゃないわね」



「名前が泣きついてきたぞ、…お前また何かしでかしたのか」
「……何もしてないよ」
「…随分不貞腐れた顔だな」
「うるさいロリコン」
「なっ!?」



どいつもこいつも。



「名前の魅力はとても可愛らしいところだな、あの小動物のような瞳には敵わないな」
「なるほどー!さすがリュゲル兄!オレも名前のこといいなーって思ってたけど理由までは考えたことはなかった!そこまで考えるなんて、やっぱすげーなリュゲル兄は!」
「フフ…言うなガンダレス、それ以上何も言うな……」
「ぎゃいぎゃい喧しいよ馬鹿兄弟」
「ロダン、さっきから君は何をそんなにイライラしているんだ」
「イライラなんてしてない」
「イライラなんてしてないこともないこともないこともないだろう?…ん?」
「イライラなんてしてないこともないこともないこともないのかー、…あれ、結局どっちなんだリュゲル兄」
「そ、それはなガンダレス…ロダンのみぞ知る、というやつだ…」
「なるほどすっげー!ロダンって謎めいた奴なんだな!」
「ああ、ミステリアスというやつだ」
「みすてりあす!!オレにはさっぱりわかんねー!やっぱリュゲル兄は何でも知ってるんだなー!すっげー!」



ぎゃいぎゃいとワケのわからない会話を繰り広げるバラン兄弟のいる部屋から出て(せっかくだから、外から鍵をかけてやった。あいつらは馬鹿だから2時間は気づかないだろう、それから焦って慌てふためけば良い。バーーーーーカ)そのまま廊下を歩いていると見慣れた後姿が見えた。彼女の名前を呼ぶと、大げさに肩を震わせ、振り返った。…何なんだよその態度。

ボクがあからさまに顔を顰めると、彼女…名前は泣きそうになりながらボクの名前を呼んだ。



「そこに突っ立っていられると邪魔で仕方ないんだけど」
「ご、ごめん…」
「なんで目をそらすわけ?人と話すときは目を見て話せって教わらなかったの?それともボクが教えてやろうかァ?」
「…ごめん、なさい」
「謝ることしかできないの?だから君はファラム・オービアスのお荷物って陰でこそこそ言われてるんだよ」
「っ…」
「……何か言えよ」
「…………」
「そうやってすぐ泣くから他の奴らになめられるんだよ、ほんっと学習能力がない馬鹿だよね!」
「…うるさい。意地悪ロダン」
「………ハッ、毎回そうやって言い返せば良いんだよノロマ」
「っ…」



また肩を震わせる名前を追い越して、舌を出す。アイツはボクのほうを睨んでいた。自然と口角が上がる。
きっとまたヒラリやバルガやあの兄弟に口々に説教されるのだろうと思うと、少しだけ気が重くなったが、口笛を吹くくらいは清々しい気持ちだった。








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ファラムの一員で紫天王ではない女の子のおはなし。ファラム紫天王のみなさんに大切にされてる子。ロダンくんが一番の心配性だと可愛い。でも素直になれないロダンくんだといっそう可愛い。この設定でお話かきたいです。



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