luce、バニラブルーの続き



「っ、もういい加減にしろ青山っ!」
「うるさい!お前こそ調子に乗るなよ一乃!」



一乃七助と青山俊介が、喧嘩した。










「一乃青山もアップしておけ」
「監督、こいつと一纏めにしないでもらえますかね?」
「俺のほうこそ、虫唾が走ります」
「そ、…そうか悪かった」


一乃くんと青山くんはいつもならベンチでも隣同士で座るくらい仲が良い、親友のような間柄だ。
だが何があったのか、今日の二人は誰がどう見ても険悪で、先ほど八つ当たりをされた鬼道監督も少しだけ戸惑っているようだ。



「ちゅーかあの二人どうしたわけ?昨日まであんなに仲良かったのにさ」
「知らねーよ」
「まあ確かに…気になりますよねぇ…」
「あっ、名前なら理由知ってんじゃね?」
「そうですね…苗字さんはあの二人と仲良いですからね」








だが、私も一乃くんと青山くんが喧嘩した理由は知らなかったのだ。私は二人と特別仲が良い。だからこそどうにかして仲を取り持ちたいのだが…ベンチで黒いオーラを放っている二人と話せるような雰囲気ではない。

…よし、とりあえず昨日から今日にかけてのことを思い出してみよう。




昨日はいつもと同じように二人と一緒に帰った。そしていつものように曲がり角で二人と別れた。そして次の日の朝、学校に来てみれば二人はあんな状態になっていた。…これは、私と別れた後に何かあったに違いない。


私はもう一度二人のほうを見る。二人とも間逆を向いていて、あからさまにお互いのことを見ようとしていない。このままだとチームにも悪影響が出るし、放ってはおけない。それに私は二人の仲間で、友達なんだから。…よし!





「一乃くん、青山くん」
「「苗字!」」
「あ…えっと…」
「どうしたんだ苗字、俺に何か用事があって来たんだろ?」
「何言ってんだよ馬鹿一乃。俺に用事があって来たに決まってるだろ」
「は?馬鹿?お前のほうが馬鹿だろ」
「はあ?ついに頭がおかしくなったわけ?」
「あ、あの…二人とも…」
「はぁ、馬鹿山は放っておいて行こうか苗字」


ベンチから立ち上がった一乃くんが、私の手を取ってこの場を離れようとする。だが青山くんも一乃くんとは反対の手を取り引っ張る。い、痛い痛い。


「離せ青山、苗字が痛がってるだろ」
「お前こそ離せ一乃」
「あ、あの…」
「…この際だからハッキリさせておかないか?苗字」
「え?」
「…そうだな、…俺と一乃、どっちが好きなんだ?」
「え、」
「正直に答えてくれないか?」
「ああ」
「…え、え…どっちがって、どっちも同じくらい、好きだけど…」


私が正直に口にすると、一乃くんと青山くんはポカンと今まで顰めていた表情を崩した。
そして二人同時に頭を抱える。


「はぁあ…やっぱりそういう対象じゃないか…」
「だな」
「は、え?な、何が?」
「…いや、…何でもないさ。な、青山」
「そうだね、一乃」
「?」


先ほどまで喧嘩をしていた筈の一乃くんと青山くんが困り顔でアイコンタクトを交わした。え、え、どういうこと?仲直りしたの?え、でもいつの間に?


「どういうことなの?喧嘩してたはずじゃ…」
「いや、気にしないでくれ(苗字がどちらを好きか、で)」
「…ああ(揉めてたなんて言えない)」



よく分からないけど…とにかく、先ほどまでの険悪な雰囲気は無くなった。これにて一件落着なのかな…?
そう思って二人を見てみると、再びお互い睨み合っていた。…え、あれ?


「だけど俺は諦めてないからな、青山」
「俺もだよ一乃。今度からは手加減なしで行かせてもらうから」
「ああ、俺もだ。…覚悟しておいてくれ、苗字」
「…え?へ?わ、私?」




20120108


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テーマ「人外ファンタジー」
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