(GO19話ネタバレ注意)



帝国戦の次の日、いつものように先生からの呼び出しが終わった後携帯を開くと、一通のメールが。…一乃くんからだ。
いつも私は、呼び出しが終わってから一乃くんと青山くんの練習を見に行くことが日課になってる。だから、一乃くんも私が遅れていくことは知っている筈なんだけど…。もしかして何かあったのかな?

急いでメールを読んでみると、そこには一文だけ…「神童にバレてしまった」と書いてあった。
私はそこでハッとして、急いでグラウンドに向かう。

そこには既に神童くんは居らず、一乃くんと青山くんはベンチに座っていた。
私が声をかけると、神妙な顔つきで二人は私を見上げる。


「苗字…」
「神童くん、残っていたんだね」
「……」

私が二人と同じようにベンチに腰掛けると、一乃くんが少しずつ先ほどあった出来事を話し始めた。


「神童は俺たちがこうしてここでサッカーをするのを、許してくれたんだ。…サッカー部だったんだから、良いんじゃないかって」
「…そっか」


それを聞いて、安心した。
去っていった二軍の皆を、サッカー部の皆はどう思っているんだろう…と少し気になっていたから。
キャプテンである神童くんが、そう言ってくれたのは…何だか心強かった。それに、神童くんと一乃くんと青山くんたちが「話」をするきっかけが出来てよかった。



この二人は昨日の帝国戦を見に来ていたらしく、試合終了後にメールで呼び出されて、それから少しだけ話しをした。

二人は悩んでいた。サッカー部を辞めてよかったのか、と。
私はその時、感じたんだ。…先ほどの試合は、もしかしたら彼らにとって何かのきっかけになったのではないか?と。
もしかしたら、この二人は戻ってくるかもしれない…とも思った。

今日の神童くんとの会話は…良い意味で二人に刺激を与えたのではないのだろうか。
だから私は…彼らが戻ってくるその日まで、全力でサポートしようと決意した。






あれから何日かして、決勝戦の前日になった。
今日は前日練習や準備などで忙しいだろうと配慮してか、一乃くんと青山くんから今日の練習は断られた。

夕方まで雷門イレブンの練習を見て、それから制服に着替えて朱に染まった空を見上げる。すると、スカートの中にあった携帯がぶるりと震えた。
着信だった、相手を確認すると…青山くんだ。急いで通話ボタンを押すと、今ではもうスッカリ聞きなれた青山くんの声が聞こえてきた。


「いま、どこにいる?」
「学校だけど…」
「商店街の後ろの公園に、来れる?」
「え、うん…どうしたの?何かあった?」
「…話したいことが、あるんだ」

少しだけ震えていた青山くんの声。…私は「すぐに行くから」と言って、電話を切った。







公園に行くと、青山くんと一乃くんがいた。一度家に帰ったのか、私服姿の二人は私を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。


「悪いな、こんなところまで来てもらって…」
「…本当にごめん。でも、苗字には直接言いたかったんだ」
「……」
「…俺たち、サッカー部に戻るよ」
「…一乃くん」
「今さら…かもしれない。けど、…俺たちなりに考えて、考え抜いた結果なんだ」
「…青山くん」
「だ、だから…」


一乃くんの言葉をさえぎって、私は二人に抱きついた。
少しだけよろけながらも、支えたくれた二人の顔を交互に見ながら、精一杯の笑顔を彼らに向けた。



「おかえり!」









海王学園に向かうバスの中、私たちは一番後ろの席を陣取って座っていた。
二人の間に挟まれながら、他愛の無い話をしていると、ふいに一乃くんが真面目な顔で私のほうを見る。


「ありがとう」
「…え?」
「苗字がいたから、俺たちはサッカーを続けることが出来たんだ」
「そ、そんな…私は何もしてないよ」
「そんなことない。苗字が俺たちをサポートしてくれたから、俺たちは決意することが出来たんだ。…本当にありがとう」

青山くんにもお礼を言われた。
…だったら、…私だって。


「……じゃあ、私もありがとうって言わないと」
「何でだ?」
「…本当に大切なことが、何か…わかったから」
「…大切なこと?」
「ふふっ、内緒」


マネージャーは、ドリンクを渡したり記録をつけることだけが仕事じゃない。
選手にとって動きやすい環境を作ること、そして直接的な言葉ではなく…彼らが安心できるような「道」を示す仕事なんだ。

私が笑うと、青山くんと一乃くんも微笑んでくれた。
これから、だ。これからゆっくりと…また皆で笑いあえる日々を取り戻していけたらいいな。




一乃青山復帰記念に/luce...光



20110908


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