お菓子なんて滅多に作らないけど
彼は甘いお菓子が大好きだから
今日はちょっと頑張ります


「溶かしバターってどうやって作るの…」

レシピを引っ張り出してきたのはいいけど、溶かしバターの作り方は載ってなかった。ええ、お菓子作るのに基本的なことだと思いますけど、滅多に作らないから分からないんですよ!バレンタインデーとかはお母さんと一緒に作るし、その時はデコレーションしか手伝わないし、今日はそんな頼れるお母さんは仕事でいないし…。
とりあえずバターを溶かすんだよね?湯せん?湯せんだっけ。チョコレート作るとき、お母さんがチョコレートを湯せんで溶かしてた気がする。バターも湯せん?それともレンジでチンすればいいのかな?何秒?5分?10分?分からないから湯せんで様子を見ながら溶かそう、そうしよう。

卵に砂糖を加えて混ぜ、さっきのなんちゃって溶かしバター・牛乳・バニラエッセンスを加え更に混ぜる。お、なんかお菓子の生地っぽくなってきた。
さっきあわせてふるっておいた薄力粉とベーキングパウダーをそれに入れて、えーっと。粉っぽくなくなるまで混ぜる。うーん、腕が疲れてきたなあ。
それからフライパンにバターを塗ってしっかり温める。えーっと、フライパンがしっかり温まったら、フライパンの底を濡れ布巾につけて冷まします?え、面倒くさい。だけど聞いたことがある。お菓子は手を抜いたら失敗すると。彼の笑顔が見たい私は、手を抜かずに頑張る。頑張れ。
弱火にして生地を流し入れる。ハート型にしたかったのでちょっと頑張った。歪なハートになっちゃったけど、愛の力でカバーだよね、と理由を付け蓋をする。
ふつふつしてまわりの色が変わったら、ひっくり返せばいいらしい。じゃあちょっと休憩ー。
なーんだ、以外と簡単。いや、まあ簡単なものを作ってるからだけどさ。ディラン喜んでくれるかな?彼が来るまであと20分。

「そろそろかなー」

と蓋を開けるとまわりの色が変わってた。フライ返しでひっくり返すと、なんだかちょっと茶色すぎる気がするけど、それでも美味しそうな焼き色がついていた。
蓋を閉じてもう片面を焼いている間に、盛り付けの準備しよう。
真っ白いお皿に庭で摘んできたミント、はちみつにバター。全てを取り出して、準備オッケー。同じようにあと3枚焼いて、白いお皿に重ねて置くとチャイムが鳴った。

「ディランだ!」

エプロンをリビングの椅子の上にかけて、それからすぐに玄関に行きドアを開けると、ニコニコ顔のディランがいた。

「ハロー名前!あれ?なんだかいい匂いがするね!」
「いらっしゃい、ディラン!えへへ、まだ内緒だよ」
「何かなー、楽しみだなー!」

リビングに案内して、私は一人キッチンへと向かう。
てっぺんに四角に切ったバターを置いて、ディランの好きなはちみつをたくさんかける。そして横にミントを飾ってできあがり!
お母さん特製のラズベリージュースをガラスのコップに入れて、トレーの上にお皿とコップとナイフとフォークを乗せてリビングに運ぶ。

「ホットケーキ!ミー大好きだよ!名前の手作りかい?」
「うん!ディランのために頑張って作ったから食べて!」
「ミーのためにサンキュー!愛してるよ名前!」
「私も愛してるよディラン!」

ちゅっとキスをすると、ディランは笑いながらフォークを手にして気づく。

「ハートじゃないか!」
「ハートだよ」
「これはミーへの愛のメッセージと受け取ってもいいかい?」
「もちろん!」
「もう本当に可愛いよ名前!じゃあいただきまーす!」

ホットケーキをナイフで切って口に運ぶディラン。ドキドキドキドキ。自分で作ったものを人に食べてもらうって、こんなにドキドキするんだね。じゃあいつも晩御飯を作ってくれてるお母さんは、いつもドキドキしているのかな?

「うん、うん!すっごく美味しいよ!名前はいいお嫁さんになるね!もちろんミーの!」
「ディランのお嫁さんにしてくれるの?」
「もちろん最初からそのつもりさ!ほら、名前も食べなよ!とっても美味しいよ?ほら、あーん」
「あーん」

口の中に広がる甘さ。とても美味しい。やるじゃん私。
するとディランが持っていたフォークをお皿の上に置く。そして頬にディランの指先が触れた。自然に目を瞑ると、ディランの唇が重なった。先ほどより甘く、深いそれに頭がふわふわして、気持ちよくて。ディランの背中に腕をまわすと、きつく抱きしめられた。ああ、幸せ。



バターと砂糖と小麦粉と、君で膨らむ

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